エンゼルス、今度こそ売却合意へ
現地2026年9月1日、これは驚きましたね。
エンゼルスのオーナー、アルテ・モレノ氏がクラブ売却に合意です。こちらはLAタイムズ、The Athleticが報道しております。全く、降って湧いたきたような情報に驚きを隠せなかったです。というのも、同氏はここのところ、売却の意思を示していなかったからです。
2022年8月に売却模索→2023年1月にキャンセル
実は今からちょうど4年前、まだ大谷選手が在籍していた現地2022年8月23日に同氏は一旦は売却の方向を模索。これはFA前の大谷選手のキャリアにも影響する事案でもありました(良い意味で)。

ところが、現地2023年1月23日、同氏はクラブ売却をキャンセルしたのでした。この時は「やり残したこと」があるゆえ、クラブを売却しないことを決定したという声明を発表。

2023年は大谷選手のFA前ファイナル・イヤーだったということもあり、シーズン終了後のことも考え、最大限そこに寄り添う形にした・・・ようにも見えますが、大方の見方は売却も視野に入れてなんとか大谷選手を囲い混んでクラブ売却の価値を高めようという目論見がプンプン臭っていたのでした。
モレノ氏の再三の現場介入は編成に大きな影響を与え、クラブは2014年にALDSに進出して以来、プレーオフを逃し続けている状況でした(2022年を終えて8年連続)。
売却のキャンセルにより、エンゼルスは進歩どころか、低迷から浮上できないことがほぼ決まったような方向性となり、2023年から2025年に至るまでさらにプレーオフから遠ざかる事態を招いたのでした。2026年はまだ終わっていませんが、エンゼルスはとうの昔にプレーオフ逃しが決定的に。これで2014年から数えて2025年までで11年連続でポストシーズン逃しで、2026年も入れると12年連続となります。当然、MLBワースト。
売却先はラムズのオーナー
今回の売却先はNFLのロサンゼルス・ラムズのオーナーのスタン・クロエンケ氏(Stan Kroenke)です。クロエンケ氏はNBAのデンバー・ナゲッツ、NHLのコロラド・アバランチ、メジャーリーグサッカーのコロラド・ラピッズ、そしてイングランド・プレミアリーグのアーセナルFCの過半数の株式を保有しており、今回でアメリカ4大スポーツの一角、MLBも手に入れることとなりました。また、ラクロス(NLL:ナショナルラクロスリーグ)のコロラド・マンモス(Colorado Mammoth)のオーナーでもあります。
エンゼルスの企業価値は4Bドル
エンゼルスの売却額は、$40Bと言われており、これは先日、パドレスの新オーナーとなったホセ・E・フェリシアーノ氏とクワンザ・ジョーンズ氏が買収した際の過去最高額である$39B上回る額となりそうです。
これは企業価値が$40Bと言われおり、この価格でクロエンケ氏が取得するのかどうかはまだ明白でもありません。
取得するのは過半数の株式
というのも、この買収劇で特に注目すべきものがあり、それはクロエンケ氏が購入するものはモレノ氏の保有する過半数の株式であって、クラブ全体を購入するわけではないという点です。
モレノ氏は依然として他の少数株主で関与することになりますが、後にクロエンケ氏が彼らから全ての株式を買い上げるかどうはまだ未定です。
という形なので、確かにエンゼルスの企業価値は$40Bではありますが、買収価格と一致するかどうかはまだわかりません。普通に考えれば、1/2強ということですから、半分くらいになるでしょうか?
メッツもウィルポン家が少数株主
なお、メッツを現地2020年9月14日に現オーナーのスティーブ・コーエン氏に売却されましたが、同オーナーの持ち分は95%。残りの少数株主は以前からのウィルポン家です。

ウィルポン家の持ち分がメッツの成績に関連しているのか、その因果関係は探れませんが、あまり評判のよろしくないこの元オーナーとさっぱり別れることも難しいようです。それはそうですね。少数であってもオーナーには違いありませんから、受けるメリットは多分にあります。
今回のエンゼルスはモレノ氏の持ち分はこれから減るかもしれませんが、これからもメッツ方式で少しだけ関与してくるかもしれません。選手と近づいたり、プレミアのつくような試合を見られたりといろいろなメリットは多いですから。
売却時期は2027年1Q
モレノ氏は売却についてプレスリリースを発表。「エンゼルスの組織は、クロエンケ・スポーツ&エンターテインメント(KSE)との今回の取引を発表できることを嬉しく思います。この取引は2027年第1四半期に正式に完了する見込みです。モレノ家は23年間にわたりエンゼルスを率いてきたことを光栄に思っており、KSEの経験と実績を踏まえると、彼らがこのフランチャイズにとって最良の次期オーナーであると確信しています。エンゼルスの組織は、ファン、従業員、選手、そしてビジネスパートナーの皆様への取り組みを引き続き推進していくことを楽しみにしています」と。
なお、ブルームバーグによると、スタン・クロエンケ氏の純資産は$26.8Bです。
モレノ氏のエンゼルスでの歴史
アルテ・モレノ氏はMLBの近年の歴史において最も批判を浴びてきたオーナーの一人。
エンゼルスは2002年にワールドシリーズを制覇。それを受けてモレノ氏は2003年にエンゼルスを買収。当時の買収額は$184M。今回は桁が違いますから、大変な価値になりました。
モレノ氏の買収後、エンゼルスは数シーズンはプレーオフ進出を果たしました。
- 2004: ALDSまで進出
- 2005: ALCSまで進出
- 2007:ALDSまで進出
- 2008:ALDSまで進出
- 2009:ALCSまで進出
- 2014: ALDSまで進出
しかし、上述した通り、確定している分だけで11年間、プレーオフを逃し続けています(2026年を入れると12度)。エンゼルスはMLBでワーストの成績を出し続けていると言わざるを得ません。
ちなみに2015年に85勝を記録し、勝ち越しとなりましたが、この後は勝ち越しもありません。
大谷、トラウトを擁しても・・・
この長期にわたる不振は、6年間にわたり、大谷&マイク・トラウトというMLB屈指の偉大な選手を擁していたにもかかわらず、継続したのはご承知の通りです。
最悪の現場介入
頻繁な編成トップと監督の交代
その最たる要因はモレノ氏による現場介入。現マリナーズのPOBOのジェリー・ディポートは2014年の地区優勝時のGM(ゼネラルマネージャー)でしたが、2015年7月、当時の監督のマイク・ソーシアと対立した末に辞任。これはモレノがソーシアを支持したため。
その後は大谷入団時のGMであったビリー・エプラーが同職に就任したものの、5年後に解任。後任はペリー・ミネイジアンで、そのミネイジアンも2026年夏に解任。現時点では、元カージナルスの編成トップであったジョン・モゼリアックを暫定GMとして据えています。これは正式にGM要請があったものをモゼリアックが丁寧に断ったとも言われています。モレノの下ではやりたくないでしょう。 オーナーが変わることでモゼリアックが正式に編成トップになるかどうかはまだ決まっていません。
このように編成トップがコロコロと入れ替わったのもモレノの介入によるもの。
監督の交代はさらに顕著で、2018年シーズン終了後にソーシアが監督を退任した後、若いブラッド・オースマスを招聘したものの、1年後にジョー・マッドンに代わりました。大谷選手の二刀流を実現したマッドンでしたが、2022年シーズン半ばに解任。これはけが人多発で負けが混んでしまったからなのですが、この直前にフィリーズが監督交代で劇的に機能したことを受けて実施したもので、事情が違うゆえに当然同じ結果は出ず。むしろマイナスでした。
この後、現西武ライオンズの主砲、タイラー・ネヴィンのお父さんのフィル・ネヴィンが後任となり、1シーズン半チームを率いた後、オールドスクールのロン・ワシントンに交代。ワシントンは心臓のバイパス手術によってほとんど指揮を執れず、暫定監督にはベンチコーチのレイ・モンゴメリーが代役として指揮。シーズン終了後、この両者は再任されず。
その代わりに、モレノはコーチ経験のないOBで元捕手のカート・スズキを監督に起用。1年契約という異例の条件で就任させました。1年で結果が出るわけもなく・・・。
こうした監督交代には毎回、コーチ陣の大幅な入れ替えも発生して現場は大混乱となり、戦える体制ではなかったのが最弱への要因の1つとなりました。
大型契約の失敗
筆者はモレノの最大の失敗は明らかにピークを過ぎたアルバート・プホルズとの大型契約がそもそもの失敗だと思っております。通常の感覚なら10年/$240M(2012-2021)などありえない条件でした。プホルズにこだわったとしても半分の期間です。カージナルス時代の結果など出るわけもなく。
それにアンソニー・レンドンとの契約はもはや悲惨としか言いようのない結果でした。

また、マイク・トラウトとの14年の延長契約もさすがに長すぎましたね。額が大きすぎて、フィラデルフィア出身のトラウトはフィリーズに動けずにいます。
これらのメガディールは当然、モレノの介入。これでは組織がうまくいくわけがありません。
大谷のレイズ移籍の話は当然拒否
2023年、エンゼルスはトレード・デッドラインで「買い」を選択し、ポストシーズン進出を目指しました。理由はポストシーズンを熱望する大谷選手に寄り添い、囲い込みたかったため。

今年の夏初めに明らかになったことですが、実はこの2023年のトレードデッドラインで当の大谷選手のレイズ移籍がかなり現実味を帯びていたことが判明。
このとき、レイズが差し出そうとしていたのは、トッププロスペクトの一人だった若手3Bで、現在、ALでHRを量産しているジュニオール・カミネロでした。
そんな裏話がありながら、エンゼルスは8月に失速。月末には主力をウェーバーに公示してサラリー削減に走ったのでした。大谷選手をモレノが手放す訳がないのでした。

今夏に徴候
モレノはそのほか、ファンに勝利が優先事項ではないと発言したり、とにかくズレた感覚のオーナーでしたが、今トレードデッドラインではようやく解体に着手する姿勢が出ました。筆者は暫定GMのモゼリアックの影響かと思っていたのですが、実はもうこのとき、売却の徴候が出ていたのかもしれませんね。
ホセ・ソリアーノやチェイス・シルセスはトレードされ、注目だった左腕のリード・デトマーズやSSのザック・ネトーは残りました。これはプロテクトすべき選手をピックアップしていたということだったかもしれませんね。
新オーナーはエンゼルス・ファンには朗報
なお、新オーナーのスタン・クロエンケ氏はエンゼルス・ファンには救世主になるかもしれません。
クロエンケ氏の買収したチームは、結果を出すという実績があるのです。しかも即座に出したケースも!
まず、2000年にNHLのコロラド・アバランチを買収し、その1年後の2001年にスタンレー・カップ優勝(ホッケーのワールドシリーズみたいなもの)。
2018年には由緒あるサッカーチーム、アーセナルを買収し、2026年6月に同クラブは22年ぶりとなるイングランド・プレミアリーグ優勝を果たしました。
2010年にNFLのセントルイス・ラムズを買収し、2016年に本拠地をロサンゼルスに移転させ、移転後6シーズン目でスーパーボウル制覇を果たしました。
他にもNBAのデンバー・ナゲッツは2022-23シーズンに優勝。ナショナル・ラクロス・リーグのコロラド・マモスは2022年に優勝など。
文化も変わるか?
エンゼルスはとにかく野球が雑。守備、走塁を始め全てが雑。選手の個人スキルがうまく機能しておりません。
それに緩い気質は、悪い文化も呼び込んでいるように思えてなりません。
まず、投手の粘着物質の件はエンゼルス関係者が調合に大きく関わったとされていましたし、薬物で亡くなったタイラー・スキャッグスは、チームスタッフが調達に関与したことも明らかです。


MLBを揺るがす大きな事件になんでそんなに関わるの?という感じです。
こういったものが生まれないような文化も構築出来れば良いですね。
勝てるチームをつくるオーナーですから、この当たりは厳しいかもしれませんね。いずれにせよ、エンゼルス・ファンはこの新オーナーを喜んで良いと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
