収益減の算出をしていた
現地2020年5月13日にコミッショナーオフィス(MLB側)とMLBPAが1度目の会合をもちましたが、この時にMLBがMLBPAにサラリーに関してプレゼンテーションしたことがあきらかとなりました。
12Pのドキュメントを用意
MLBがMLBPAに用意したのは”Economics of Playing Without Fans in Attendance” と題されたドキュメントで全12ページ。
これが両者にとって最大の難関となるレベニューシェアリングの交渉のファースト・ステップなるものとなった模様です。
平均640Kのロス
それによると、82試合を無観客で行った場合、選手たちのサラリーによって1試合当たり平均で$640Kの損失が出るという内容でした。
今回の新型コロナウイルスのパンデミックによって遅れたシーズンを再開するために提案された方法では、MLBクラブ全体で40億ドルの損失を引き起こし、収益の89%はプレーヤーたちのサラリーに消えるという。
前提が違う
クラブ側はゲーム数が増えれば増えるほど、赤字は膨らんでいくと主張。一方、選手会側はゲーム数を増やせば、損失は減るだろうという認識でおり、双方の前提が真逆です。なお、選手会はローカルのスポーツ産業のつながりから、決して赤字は膨らまないという主張もしています。
EBITDAとは?
各クラブの2020年の収益の計算のもとになったのは、EBITDA(イービットディーエー)。これはセイバーメトリクスの野球用語ではありません。会計用語です。Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略で、日本語だと「償却前営業利益」。
昔、筆者はエビータ??と言って大恥をかいたことがありますが・・・。皆様気をつけてください(蛇足でした)。
「前」というのは「差し引く前」のこと。では「何を差し引く前なのか」というと、税金、支払利息、有形固定資産の減価償却費、無形固定資産の償却費。
損益計算書の営業利益から整理してみます。
PL・ISの営業利益
損益計算書のことをPL(Profit and Loss Statement)もしくはIS(Income Statement)といい、どちらかというとPLと呼ぶ人が多いと思います。
PLの営業利益までの出し方はご覧の構造。本来は当期純利益までつづきますが、ここでは営業利益まででストップしておきます。
- 売上高
- – 売上原価
- 売上総利益
- – 販売費及び一般管理費
- 営業利益
EBITDA(イービットディーエー)は、この営業利益に、キャッシュフロー・ステートメントの営業キャッシュ・フロー調整項目の減価償却費を加えた額になります。
非常に細かいことを言うと、売上原価(機械などの減価償却費)、販売費及び一般管理費(ビルなど)には原価償却が含まれています。そしてそれらは引かれています。ただ、PLでは原価償却費用の累計がわかりません。だから、累計がわかる営業キャッシュ・フロー調整項目の減価償却費を見るということになります。
EBITDA=「営業利益+減価償却費」
何がわかるのか?
EBITDAはM&Aを行う際に使われる指標のことで、買われる企業の収益と費用の概略を掴むのに適しています。また、大きな設備投資を行う工場をなどの生産設備を持つ業界ならより適しています。
プロスポーツの場合は、球場を建てたりなど設備投資の額が大きいのでEBITDAは指標として有効と考えてよいと思います。
2020 MLB 30クラブの予想利益
13日の会合では、どうやら下記の資料も出たようです。それが下記の表で、各クラブの2020年の予想収益を表しています。
クラブとしての各種収益から選手のサラリーなどを引き、各種償却費用が引かれる前の数字が以下です。当然ながらどこもマイナス。この他に利息の受け取りなどのプラスの収益などもあるものの、ここからさらに利息の支払い、償却費用、税金などが差し引かれますのでさらにマイナスとなります。
【2020 MLB Projected Earnings】
Source: Associated Press (Link: ESPN)
TEAM | EBITDA |
---|---|
ヤンキース | -$312 M |
ドジャース | -$232 M |
メッツ | -$214 M |
カブス | -$201 M |
レッドソックス | -$199 M |
ジャイアンツ | -$188 M |
パドレス | -$172 M |
ナショナルズ | -$166 M |
ブレーブス | -$161 M |
フィリーズ | -$159 M |
ツインズ | -$149 M |
アストロズ | -$148 M |
ブルージェイズ | -$139 M |
ブルワーズ | -$139 M |
カージナルス | -$136 M |
ロッキーズ | -$134 M |
インディアンス | -$132 M |
レッズ | -$130 M |
レンジャーズ | -$128 M |
ホワイトソックス | -$127 M |
マーリンズ | -$126 M |
アスレチックス | -$115 M |
ロイヤルズ | -$113 M |
マリナーズ | -$113 M |
エンゼルス | -$110 M |
ダイヤモンドバックス | -$107 M |
レイズ | -$91 M |
パイレーツ | -$91 M |
オリオールズ | -$90 M |
タイガース | -$84 M |
たとえばヤンキースは3億1,200万ドルの損失が発生していますが、このうちの約1億ドルは新ヤンキースタジアム建設の資金調達の際に起債した債券に対する支払いが入っています。
これからですが、選手会側は収益の何が抜けているなどの指摘を積み重ねて行き、損失が小さくなる一覧を出してくれるのではないか?とも思います。
以上、サラリーに関する話し合いのファーストステップについてでした。
なお、EBITDAに関しては、M&Aの会社のホームページをご覧になるなど、プロが書いた内容をお読みになることをおすすめします。ここで記載したことは表面的な内容でしかないことはご了承願います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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