意外にもナッツ入りとなった小笠原投手
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— Washington Nationals (@Nationals) January 24, 2025
現地2025年1月24日、中日ドラゴンズからポスティング・システムを使ってMLB入りを目指していた小笠原慎之介投手のディールが決まりました。
なんと意外にもナ・リーグ東地区のワシントン・ナショナルズに決定です。こちらは同日、ナショナルズが正式発表しております。
契約内容
ナショナルズと小笠原投手の契約は現時点で判明しているのはご覧の内容。3年目のオプションなどはない見込みですが、1年目の活躍次第では延長ということもあり得る話です。こちらはまだ大筋の内容ですので、判明しましたら更新します。
- 2年/$3.5M保証(2025-2026)
- 2025: $1.5M
- 2026: $2M
小笠原慎之介のMLBへの手続き
小笠原慎之介投手はポスティングを通じてのメジャー入りですが、一応プロセスを見て行きたいと思います。
一般的なNPB選手のMLB挑戦への契約プロセス
まずは一般的な例としてNPBの選手がMLBに挑戦する際のプロセスを整理しておきたいと思います。こちらは山本投手のポスティングの際に記載した記事の引用です。
NPB選手のFA権の要件は2つ。
NPBの選手もMLBの選手のサービスタイム(MLS)と同じように1シーズンを1年と換算する計算があります。NPBの場合は年間145日の一軍登録を1年とし、それに満たない一軍定着前のシーズンが複数あれば合算して累計でカウントされます。そのNPB版のサービスタイムの計算で以下のシーズンを過ごした場合、フリーエージェント権利を有することとなります。FA権利は国内FA権と海外FA権に分かれており、国内が8シーズン、海外が9シーズンとなります。流出を防ぐためにやはり海外の方が長めに設定されております。
- 国内FA権:8シーズン
- 海外FA権:9シーズン
9シーズン未満の選手の場合は?
では9シーズン未満の選手はどうなるのか?
フィルター1:ポスティング
海外FAの資格を得る前にMLBでのプレーを希望する選手は、「ポスティング・プロセス」という制度を利用しなければなりません。
日本の球団は11月1日から12月15日※の間に選手をポスティングすることができ、それが受領・承認されればMLBのクラブはその選手と交渉することが出来ます。その期間は45日間のウィンドウ。
※2018年以降の規定。2017年までは12月5日で30日でした。修正しました。失礼しました。
選手との契約が決まったMLBのクラブは、日本の所属球団にリリース・フィーを支払うことになります
(リリース・フィー)
- $25M未満で合意した場合→20%
- $25,000,001〜$50Mで契約した場合
- 最初の$25Mに対して →20%
- 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
- $50,000,001以上の契約
- 最初の$25Mに対して →20%
- 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
- $50Mを超える部分に対して→15%
- 契約にSupplemental Fee(余剰の料金)がある場合、サイニング・ボーナス(契約金)あるいは、Vesting Option(〜を達成すれば$〜)がある場合はそれぞれ15%。
- マイナー契約の場合は、契約金の25% + 40manロースターに登録された場合の追加料金が加算されます。
フィルター2:ISBPの考慮
MLBが外国人選手と契約する場合はフリーエージェントか、日本人選手の場合はFA条件に満たない場合はポスティングシステムを通さなければなりません。
さらに、NPBの9年未満の選手でポスティングを利用してMLBに挑戦する場合は特例があり、以下の条件をクリアーしていれば、ISBPを考慮しなくて良いということになります。
- 年齢は25才以上
- 外国のリーグ(=NPB)で少なくとも6シーズン経過
ISBPとは”International Signing Bonus Pool” (インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール)のことで、海外選手と契約する場合の各クラブの契約金の総額のことです。かつて契約金を釣り上げることで根こそぎいい選手を持っていく場合があったので、公平を期するように各クラブの契約金に上限がかけられている・・・というイメージです。
年齢、シーズン数が満たない場合、ポスティング+インターナショナル・サイニング・ボーナス・プールいうことになります。
小笠原投手の場合
- 年齢:27歳(誕生日は1997年10月8日)
- NPBキャリア:
- 計9シーズン(2016-2024)ですが、二軍期間もあるので、MLBでいうNPB版のサービスタイム換算では国内も海外FA権も未達
フィルター1:ポスティング適用
ゆえにポスティング手続きが適用されます。
フィルター2:ISBPの考慮なし
また25歳以上、外国のリーグ(=NPB)で少なくとも6シーズン経過を満たしているので、ISBP(International Signing Bonus Pool)の考慮は不要です。
リリース・フィー
またポスティングを通じての契約なので、ドラゴンズにはリリース・フィーが入ります。$3.5M保証ですので(詳細が出れば多少は上下してきますが)、20%の$0.7M。仮にレート@JPY 155/USDに設定すると1億850万円ほどになりそうです。
またナショナルズの投資は$3.5M+$0.7Mで計$4.2Mとなります。
小笠原投手のスタッツ
小笠原投手のNPBでのスタッツです。
Season | G | W | L | IP | ERA | HR | BB | HBP | SO |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016 | 15 | 2 | 6 | 72.1 | 3.36 | 7 | 40 | 2 | 58 |
2017 | 22 | 5 | 8 | 119 | 4.84 | 21 | 53 | 1 | 105 |
2018 | 17 | 5 | 6 | 107.1 | 4.11 | 15 | 47 | 3 | 73 |
2019 | 7 | 3 | 1 | 38.2 | 2.56 | 5 | 7 | 2 | 32 |
2020 | 4 | 1 | 3 | 19 | 7.11 | 4 | 8 | 1 | 16 |
2021 | 25 | 8 | 10 | 143.1 | 3.64 | 16 | 51 | 4 | 115 |
2022 | 22 | 10 | 8 | 146.2 | 2.76 | 9 | 39 | 1 | 142 |
2023 | 25 | 7 | 12 | 160.2 | 3.59 | 14 | 41 | 4 | 134 |
2024 | 24 | 5 | 11 | 144.1 | 3.12 | 9 | 22 | 4 | 82 |
キャリアを通じてのBB9は3.0で2024年に至っては1.4の素晴らしさ。制球力の良さが伺えます。
ただ、懸念されているのは奪三振の少なさ。キャリアを通じたSO9は7.1で前年から大幅減となった2024年は5.1。
MLBではハードスローレフティーの部類にはちょっと入らないので、果たして今永投手のような優れた球質があるかどうかが鍵です。ただ、制球が良いのは何よりです。ナショナルズのスカウトもその制球の良さに惚れ込んだと思われます。あとはスカウトが見て球質もOKが出たのかもしれませんね。あと直近4シーズンのイニング・イートぶりも評価されたと思います。
レッドソックス他も追っていた
2024年12月10日にポスティング申請をした小笠原投手は期限が現地2025年1月24日だったのですが、ギリギリでナショナルズに決まりました。
ナショナルズの他にはレッドソックスが猛追していた模様。レッドソックスは左腕のパトリック・サンドバルをエンゼルスから獲得しましたが(サンドバルはエンゼルスから今オフ、ノンテンダーに)、2025シーズンはトミージョン手術のリハビリで投げられません。もちろん翌シーズンを見越して獲得しているのですが、先発左腕が少なめなため、獲得に走っていた模様。そのほかブルージェイズも参戦していたようです。
ナショナルズの先発
現時点のナショナルズの先発候補は、マッケンジー・ゴア(LHP)、ジェイク・アービン、ミッシェル・パーカー(LHP)、DJ・ハーツ(LHP)、トレバー・ウィリアムズ、マイケル・ソロカの6名。
左が3名いるのが良いですね。ここに小笠原投手が入りますので、LHPの中で争いが行われます。
ナ・リーグ東地区は2024年はフィリーズが地区タイトルを獲りました。安定的に強いブレーブスとともにメッツも補強がすごいです。マイアミはほぼ補強をしていないので、かなり厳しい状況。3強に対してナショナルズがどれだけ食い込んでくるか、見ものです。ドライブ・ラインでスライダーも磨いているようです!
小笠原投手、楽しみですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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