施行延期の提案も、選手会「本質は変わらず」
2026年11月3日、メジャーリーグベースボール(MLB)は現地2026年11月3日、現行のCBA(労使協定)が12月1日に期限を迎えることを受け、2027年に向けた労使交渉案の他の要素は維持しつつ、サラリーキャップ(年俸総額の上限)の導入を2028年シーズンまで延期する提案を行いました。
これにより、MLB界隈は懸念されているロックアウト突入とその長期化を避ける起爆剤が投入されたか!?と一瞬(本当にほんの一瞬)、沸き立ちかけましたが、残念ながら選手会側はその本質が変わらないことを即座に見抜き、この提案を即座に拒否しました。
MLBが行った提案
MLB選手会はサラリーキャップの導入に一貫して反対の姿勢を示していますが、リーグ側(MLB側)はこれまでサラリー総額のキャップ(上限)とフロア(下限)の導入を強く求めてきました。
今回、リーグ側が妥協案を提示したのは現行のCBA(労使協定)の失効後にロックアウトになる可能性が極めて高く、その状況下で各クラブが編成を計画し、実行することがかなり難しいことからなんとか起爆剤にと投入したものです。ただ、起爆剤にはなりませんでしたね。
サラリー・キャップ/フロア
11月3日に行われた選手会との会合で、リーグ側は2028年シーズンに向けたサラリーキャップを$258.2M、フロアを$180.2Mとする案を提示。
この数字は、2027年シーズンに向けてリーグ側が当初提示していたキャップ$245.3M、フロア$171..2MよりもMLBPA側(組合側)に歩み寄った数字。
またこの新たな数値は、2028年の予想収益を50対50で分配するという考え方にも基づいて作成されたと言われています。選手側の取り分には、数億ドル規模($100Mの桁)のアマチュア選手とのサイニング・ボーナスが含まれ、他の主要なプロスポーツリーグのキャップ・フロア制度と同様に、クラブ側による控除項目が考慮されています。
贅沢税の税収の分配
また、MLBは「贅沢税(コンペティティブ・バランス・タックス: CBT)」によって生じた$282Mを選手側にキャッシュとして分配する提案も行いました。
現行のCBA(労使協定)では、この贅沢税の税収の50%を選手側が受け取る権利があり、その資金は選手の退職年金口座(401k)の原資として充てられることになっています。
しかし、IRS(米内国歳入庁)の規定により、現時点で分配可能な額は約$72Mドルに制限されています。2026年の贅沢税の閾値(スレッシュホールド)である$244Mを超えて各クラブが支出を増やした結果、選手側に支払われるべき数億ドル($100Mの桁)もの余剰金が、現在留保されている状態にあります。
ドラフトの制度改定案
さらにMLB機構は、アマチュア選手の獲得プロセスを大幅に変更する案も提示。1つはインターナショナル・ドラフトの導入。2つ目は国内ドラフトの対象から高校生を除外すること。3つ目は国内ドラフトのサイニング・ボーナスを大幅に削減することも含まれていますが、選手会はいずれの提案にも反対しています。
選手会の反応
選手会側は、もしリーグ側のキャップ導入案を受け入れれば、その期間中に選手たちは$1B以上を失うことになると主張。
キャップ・フロア
$1Bというのは高いボールを投げているようにも思いますが、選手会側がこれだけ強い数字を出してきているということは妥協しないという意思の現れ。両者の間には深い溝があることは確かで、これは長期的な労使紛争につながりかねません。
MLBは現CBA改定時の2021年12月に選手会に対してロックアウトを実施。99日間にわたる中断を経て2022年3月中旬に事態が収束しました。
最悪の1994ストライキ
2026年5月下旬、リーグ側は「キャップ・アンド・フロア(上限と下限を設ける制度)」を正式に提案しましたが、この種の制度が提案されたのは、1994年以来のこと。
1994年は232日間に及ぶストライキによってワールドシリーズが中止に追い込まれ、最終的に選手側が法的な争いを通じて経済システムの抜本的な変更を回避しました。
これは野茂選手がMLBに行く1年前のこと。スト後の1995年、MLBは開幕しましたが、ファンは金で揉める両者に嫌気がさして球場は閑古鳥が泣いたのでした。それを救ったのが野茂さんで、彼の純粋な野球に対する心意気がファンのハートを掴み、お客さんを球場に呼び戻したのでした。
選手会のCBT設定は現状の閾値の上
11月3日に行われたリーグ側の提案では贅沢税(CBT)の閾値(スレッシュホールド)は、2027年シーズンも現行のまま据え置かれることになっています。
ちなみ2028年を想定したリーグ側が提案したキャップ・アンド・フロアの数値に基づくと、ワールドシリーズを制したブルワーズを含む12クラブが、フロア(下限)に達しておらず、その額を引き上げる必要が出てきます。一方、ドジャースなど8クラブは、キャップ(上限)を超えるサラリー総額を計上ししたのでした。
フロアを適用したら・・・
リーグ側の提案では、各クラブが特定の年に必ずフロア(下限)に達しなければならないという義務は課されないことになっています。複数年を通じた総支出額が合意されたフロアを満たしていれば、単年度の支出額はフロアの90%まで抑えることが認められるとされています。
これに対し、MLBPA(選手会)は、現行の経済システムの枠組みを維持しつつ、支出を大幅に増やすことを提案。具体的には、贅沢税(CBT)の閾値(スレッシュホールド)を現行から$56M引き上げ、$300Mに設定することを求めています。
ミニマム・サラリー
さらにミニマム・サラリー(最低年俸)を$0.78Mドルから$1.5Mへと大幅に引き上げること(2倍)、調停資格を得る前の選手を対象としたボーナスプールを現行の$50Mドルから$180Mへ増額すること。そして30歳以上でFA資格得た場合は現行のMLS(メジャーリーグでの在籍期間)6年から5年に短縮などを提案。
MLB機構は、上限(キャップ)と下限(フロア)を設ける制度の導入を条件に、30歳以上の選手に対するFA権取得時期の繰り上げを容認する姿勢を示しました。
また、ミニマム・サラリーを$0.9M(一部の選手には$1M)に引き上げ、調停資格取得前の選手を対象とした$65Mドルのボーナスプールを設けることも提案。
現在の見通し
現行のCBAは2026年12月1日に失効する予定ですが、双方は依然として全く異なる経済的見地にあります。そのため、12月2日以降、リーグによるロックアウト(施設締め出し)が発生する可能性は依然高いままです。
阪神佐藤選手、西武の平良投手、日ハムの伊藤大海投手のポスティングにも大きく影響する新CBA。
揉める未来しかない状況ですが、どうなるでしょうか!?
まとめ
- 導入の延期:2027年から直ちにサラリーキャップを施行する代わりに、現行の贅沢税制度をあと1年間維持。サラリーキャップとフロアは、2028年シーズンから正式に発効することにする。
- 新しいキャップとフロアの数値:2028年について、MLBはチームの最大支出上限を$258.2M、最低支出下限を$180.2Mと提案。
- この新たな数値(上記太字の金額)は、2028年の予想収益を50対50で分配するという考え方に基づいている。
- ただし、選手側の取り分には、$100Mの桁のアマチュア選手とのサイニング・ボーナスが含まれるほか、他の主要な男子プロスポーツリーグのキャップ・フロア制度と同様に、クラブ側による控除項目が考慮されている。
- この新たな数値(上記太字の金額)は、2028年の予想収益を50対50で分配するという考え方に基づいている。
- 即時適用される「譲歩案」(2027年より):MLBPAの同意を得るため、MLBは選手たちが長年求めてきたいくつかの主要なルール変更を提示
- フリーエージェント(FA)資格取得時期の早期化:30歳以上の選手が、6年ではなく5年の在籍期間でFA資格を取得できるようにする。
- ミニマム・サラリー(最低年俸)の引き上げ:選手の最低年俸をMLB在籍(MLS)2年以上の選手については$1M、2年未満の選手については$0.9Mに引き上げる。
- 「クオリファイング・オファー(QO)」制度を廃止。
- MLBPA(メジャーリーグ選手会)キャップの導入を先送りしたとしても、キャップが存在するという事実は変わらない。
- 主な反対理由は以下の通りである。
- キャップは論外である
- 報酬削減:MLBの「50対50の収益分配」の定義には、アマチュアのサイニングボーナスやクラブの控除額として割り当てられた数億ドル($100M桁)が含まれている。つまり、この制度は最終的に選手全体の報酬を大幅に削減することに。
- 「下限」の甘さ:MLBPAは、MLBが提案する「支出下限」は実際には厳格ではないと指摘。各チームは個々のシーズンにおいて、フロアのわずか90%しか支出しないことも許容されるため、倹約志向のオーナーに多額の支出を強制するというリーグ側の主張の説得力を欠く。
お読みいただき、ありがとうございました。

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