NLWCSの決戦
現地2026年10月1日、今季のワイルドカード・シリーズの中で唯一、Gm3の決戦に進んだフィリーズ@ブレーブス戦。
今季、94勝68敗でNLイーストを制覇したブレーブスは2022年、2023年とNLイーストを制覇。しかし、いずれもフィリーズにNLDSで敗戦し、2021年以来のワールドシリーズへの道を阻まれておりました。
それだけに、Gm2で2-1とリードしながらも、カイル・シュワーバー、ブライス・ハーパーというキーマンのHRで逆転を許し、最後の3イニングをアンドリュー・ペインターに抑え込まれてフィリーズの試合にしてしまい、1勝1敗のタイに持ち込まれたことはブレーブスにとってはあまり良い流れではありませんでした。
先発レイ・カーが劣勢を跳ね返す
しかもこの日はブレーブスにとってはブルペン・ゲームの予定で、先発は左腕のレイ・カー(Ray Kerr)。彼はリリーバーで、2026年は9試合(うち1試合に先発)、18.1 イニングでERA 1.47という成績でした。
当たっている打線を機能させるためには、オープナーの先発のレイ・カーがまずはゲームを壊さないことが最優先でした。
しかし、そんなことは杞憂でした。レイ・カーが素晴らしい投球を見せ、ブレーブスに勇気を与えます。
そのレイ・カーは立ち上がり、先頭のトレイ・ターナーをカーブでRFフライに打ち取ると、つづくカイル・シュワーバーには甘めの94.8mphのシンカーを鋭くLFへ運ばれ、出塁を許します。
しかし、カーはつづくブライス・ハーパーを91.9mphのカットボールで三振に、そしてアレク・ボームを93.7mphのシンカーで2Bゴロに抑えて、初回を無失点に。
マイケル・ハリス2世が3ランHRで援護
その裏、ブレーブスはフィリーズ先発のアーロン・ノラから2番のロナルド・アクーニャ・Jr.とマット・オルソンが四球で歩き、1アウト1、2塁のチャンス。ここでバッターはレギュラー・シーズンも含めた直近15試合で打率.355、HR 2本のマイケル・ハリス2世。2ボール後の3球目、93.5 mphのシンカーがゾーン外に落ちて行くところを拾った打球はRFスタンドへ。マイケル・ハリス2世のいきなりの3ランHRはさらにレイ・カーを後押しすることになりました。
2巡目のシュワーバー、ハーパーまで
2イニング目は三者凡退に抑えたレイ・カー。フィリーズの打者がボール球に手を出すシーンが目立ち、シンカー、カット、スライダーとかなりのキレを見せていたことがわかりました。
その好投は3回表も続き、三者凡退。ますますブレーブスを勢いづかせます。
4回表のマウンドにも上がったレイ・カーは2巡目のカイル・シュワーバー、ブライス・ハーパーに当たるターン。試合前、ウォルト・ワイス監督は、カーがどれだけ長く投げられるか確信がないままマウンドに送ったのですが、ここまでは嬉しい誤算。
この勝負どころのターンでどのような投球を見せるか?でしたが、カーはイニング先頭のカイル・シュワーバーに慎重になり、ストレートの四球で先頭を歩かせます。この四球はコントロール・ミスを防ぐ意味でも悪くなかったと思います。続くバッターはブライス・ハーパー。この打席でもカーに合っていないハーパーでしたが、4球目の94.4 mphのアウトコースへの4シームに対応。打球はSSへのライナー性の当たりに。これをSSのマウリシオ・ドゥバンが逆シングルでなんとか処理。2塁でカイル・シュワーバーをフォースアウトにして1アウトを奪いました。
ここでブレーブス・ベンチは投手交代を選択。レイはスタンディング・オベーションで迎えられました。
このブレーブスの継投はここしかないという最高のタイミングだったと思います。合っていないハーパーも最後は対応してきたので、これ以上投げると失点の恐れもあり、3.1イニングで被安打1、BB 1、SO2といういいイメージのまま降板させて正解だったと言っていいでしょう。
この後、ブレーブスはグラント・ホームズをマウンドに上げ、ホームズは2イニングを1失点に抑えました。
ブレーブスは4回裏にはオジー・アルビーズが3番手で登板したザック・ウィーラーから2ランHRを放ち、5-0とリードを拡大。エースからの追加点ということでここでほぼ勝負ありという展開に持ち込みました。
クリス・セールが登板
ブレーブスは3番手以降はロベルト・スアレス、ディディエ・フエンテス、ディラン・ドッドとつなぎ、なんとクリス・セールが登板。ワールドシリーズ最終戦か!というリレーを見せ、最後はオットー・ケンプから三振を奪ってゲームセット。
ブレーブスが6-2で勝利し、2022年、2023年とNLCSへの道を阻まれたフィリーズにリベンジを果たしたのでした。

レイ・カーとは?
このGm3で一夜にしてその名を知らしたレイ・カーについて記しておきます。
恵まれなかった学生時代
レイ・カーのフルネームはレイモンド・アレクサンダー・カー(Raymond Alexander Kerr)。1994年9月10日生まれの32歳。生まれはカリフォルニア州サクラメントですが、父親が服役と出所を繰り返したことから、ネバダ州リノの里親家庭での生活を余儀なくされます。同州のプロクター・R・ハグ高校に通いました。
一時、野球から離れる
高校卒業後、メンドシーノ・カレッジ(短大)でプレーした後、一時的に野球から離れました。ここで彼は野球選手としてのキャリアは終わったと考え、セブン-イレブンでの冷凍食品の陳列や、IMAXシアターでの仕事など様々なアルバイトを経験。
プロへ
しかし、ラッセン・カレッジの新しい野球部監督の説得により野球を再開。2017年にはアラスカ・ベースボール・リーグのペニンシュラ・オイラーズで大学のサマー・リーグに参加し、少ない試合数ながら、93mph、ERA1.13を記録。この時、22歳。
そのサマーリーグでの好投がスカウトの目に留まり、2017年にアン・ドラフティッドのアマチュアFAとしてマリナーズと契約。この時の契約金は$2,000。
プロ・デビュー
そして同年のルーキー・リーグで1イニングを投げ、これがプロ・デビューとなりました。2018年にはプロとしてのフルシーズンを経験し、クラスAで111.1イニングを投げ、ERA 5.34。
2019年にはハイAで89.2イニングを投げ、ERA 3.91を記録し、シーズン終盤にトリプルAを経験。
2020年はコロナ・パンデミックでマイナーがキャンセルとなり、2021年はダブルAからスタートし、トリプルAに昇格しました。2021年11月、マリナーズがアダム・フレイジャーを獲得したトレードでパドレスに移籍。

2022年はトリプルAで開幕を迎えましたが、4月24日にメジャー・デビュー。この年はマイナーへの降格を繰り返しつつ、5.0 IPでERA 9.00を記録。2023年は27,0イニングに登板し、ERA 4.33。
2023年12月にパドレスがOFのドリュー・キャンベルを獲得したトレードでマット・カーペンターとともにブレーブスに移籍。なお、マット・カーペンターですが、ブレーブスはトレードで獲得してすぐにリリースし、FAに。その後、花道を用意するかのようにカージナルスが1年契約で迎えました。

レイ・カーは2024年は5月から6月にかけて22.1 IPでERA 5.64、SO 27と奪三振でいい数字を残しますが、左肘UCLを傷めてトミー・ジョン手術へ。2024年終了後、ブレーブスはレイ・カーにノンテンダーをだし、一旦はFAとなりましたが、ブレーブスはすぐにマイナー契約で再契約を結びます。

とは言え、レイ・カーは2025年は全休。それがわかっていながらもマイナー契約を結んだのは三振を奪う力に注目していたのでした。
2026年はルーキー・リーグからリハビリ出場を開始し、8月半ばまでマイナーで調整。8月17日にメジャー昇格を果たし、以降は9試合、18.1 IPでERA 1.47を記録し、今回の好投の土台が出来上がっておりました。
クリス・セールがマウンドに上がった理由
ウォルト・ワイス監督はGm1に先発したクリス・セールをこの日に登板させる気などさらさらありませんでした。
しかし、Gm3当日午後、ワイス監督がオフィスに入ると、まさにそのタイミングでクリス・セールがオフィスを訪れ、デスクの向かいの椅子に座り、ワイス監督を見つめてこう言い放ったそうです。
”I feel amazing「最高に気分がいい」(むしろニュアンスは「今日は絶好調だ」)”と。
「何事?」とも思ったワイス監督でしたが、「それなら」とクリス・セールの話に耳を傾けたそうです。
そこから二人で計画を練り上げ、最終的にゲームを締めることになり、実際には最後の4アウトを奪うに至ったということです。
これにより、クリス・セールはポストシーズン・シリーズのGm1に先発し、かつそのシリーズを締めくくる投手となりました。これはまさにレッドソックス時代の2018年のワールドシリーズでのドジャース戦でクリス・セール自身がやったこと以来の出来事でした。
ワイス監督としては最終盤にカイル・シュワーバー、ブライス・ハーパーに当たるターンにぶつけたかったと思いますが、実際には8回表の1アウトからのカイル・シュワーバーに対しては、ディラン・ドッドが対応してRFフライに仕留めて2アウト。その後、クリス・セールが出て来てブライス・ハーパーから三振を奪って8回表を締め、9回表は、アレク・ボーム以降の4人で(アレク・ボームにはヒットを許した)3アウトを奪ってゲームを締めたのでした。
クリス・セールの銚子がいいという自己申告で実現したことだったということですね。
ブレーブスはこれでNLDSに進出。次はドジャースとの対戦です。
お読みいただき、ありがとうございました。

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