レンジャーズ、かなり厳しい状況に追い込まれる
現地2025年8月26日、テキサス・レンジャーズのクリス・ヤングPOBO(President of Baseball Operations)はローテーション右腕のネイサン・イオバルディ(Nathan Eovaldi/ 以下、ときにネイト)が右肩のローテーターカフを捻挫。今季の復帰は難しい見通しを明らかにしました。
先発予定を急遽キャンセル
ネイサン・イオバルディーは現地8月27日のエンゼルス戦の先発に決まっていました。
直近ではローテーターカフに関する負傷の兆候は全く見られず、今回のニュースはその意味でも衝撃的でした。
また、ネイトは現地2025年8月22日(金)のガーディアンズ戦で7イニングで被安打4、失点1、ER 1、BB 0、SO 9の好投を見せたばかりで、彼の力がレンジャーズのプレーオフ・プッシュには必要なことを周知したほどの好投でした。
ローテーターカフ捻挫とは
投手で肘の故障と言えば「UCL」もしくは「前腕部」が最も有名な故障個所ですが、肩の故障と言えば「ローテーターカフ」で、わりと厄介な場所です。ほかにインピンジメント症候群、そしてザック・ウィーラーが発症した胸郭出口症候群も多いです。
ローテーターカフとは日本語で書けば「回旋筋腱板」で肩関節を囲む4つの筋肉とその腱のグループの総称。これらの筋肉と腱は、腕の骨(上腕骨)を肩の浅い受け皿にしっかりと固定しており、腕とボディーを繋げているだけでなく、スムーズに腕を動かすのに役立っていると言ってもいいでしょう。
「腱板を捻挫した」というのはより正確には「腱板損傷」であり、腱板の筋肉や腱が伸びたり軽度の断裂を起こした損傷を指します。これはオーバーユーズ(過度な使用)、頭上へ手を伸ばすような反復動作、または突然の不自然な動きによって発生。
肩に痛み、圧痛、筋力低下などの症状を引き起こします。損傷は伸展や軽度の断裂を伴うのに対し、腱板断裂はより重篤な、腱の完全または部分的な断裂を指します。ネイサン・イオバルディの場合は現時点では損傷という診断になっています。
復帰時期は?
腱板損傷の回復期間は、損傷の重症度や治療法によって大きく異なり、数週間から1年以上かかる場合もあります。
- 軽度の断裂は理学療法などの非手術的治療で6~12週間
- より大きく深刻な断裂は手術を必要とし、完全回復には4~6か月
- さらに深刻な断裂では手術を含め6~12か月
ローテーターカフの損傷が厄介なのは、治りにくい点にあります。しかも焦って復帰時期を間違えば、二次災害(さらなる治療期間)を招くケースも。
ローテーターカフを傷めた投手は数多おりますが、元ヤンキースのルイス・セベリーノは知名度やインパクトの度合いでは有名です。要は「ときぐすり」が必要なのです。いかに休むかがポイントです。
ネイトの場合、判明したのがこの時期でレギュラー・シーズンは残り30試合程度。期間にしてほぼ一か月。早い復帰だとしても、休む期間で費やされてしまい、症状を診つつ負荷を上げていくリハビリに時間をかけていると、もはやシーズンが終わる時期となることから、今季のシーズン・エンドがほぼ決定という流れになります。
高品質な投球が多いネイサン・イオバルディ
ネイサン・イオバルディはヘルシーであれば、素晴らしい成績を上げます。
2018年のレッドソックスのワールドシリーズ・チャンプの際のプレーオフ・ヒーローでもあり、2023年にレンジャーズがワールドシリーズを制した時も12勝5敗、ERA 3.63をマーク。
2024年は29先発で170.2イニングを投げ、12勝8敗、ERA 3.80。
2025年はここまで22試合、130.0 イニングを投げ、11勝3敗で、ERA がキャリア最高の1.73。1試合平均6イニング近くを投げながら、この数字です。しかも、22試合登板のうち14試合でQS(クオリティ・スタート)を達成。対戦打者の26%を三振に打ち取り、抜群のコマンドをみせつけておりました。
故障がち
もともとは100mphをがんがん投げるネイサン・イオバルディ。いまやコマンドも超一流なのです。ところが、唯一の欠点があり、それは故障がちなところ。2023年も8月に1ヶ月ほど離脱。
今季も6月に肘の炎症でIL入りし、6月は1試合のみの登板に留まりました。
また若い時期に2度、トミー・ジョン手術を経験。
- 2007年:17才 Alvin HS(アルビン・ハイスクール)時代
- 2016年8月:26才 NYY在籍時代
コマンドの良さも故障回避の工夫の総決算で大きく花開いたというスキルを磨き続けた素晴らしい結果であるとも言えるでしょう。
レンジャーズ、事態は終戦の方向に
レンジャーズはトレードデッドラインで「買い」を選択。7月は16勝9敗でワイルドカード圏内まで数ゲーム差に迫っていたからです。その圧倒的な得失点差と上昇傾向がフロントを後押しし、メリル・ケリー、フィル・メイトン、ダニー・クーロムを獲得するために至りました。
しかし8月はここまで8勝14敗。
さらに追い込みをかけたいこの時期にシーズンの終戦を認識せざるを得ない事態が次々と発生。エバン・カーター(手首骨折)、マーカス・セミエン(足骨折)がいずれもシーズン終了となる可能性のある負傷で離脱。
そして今回のネイサン・イオバルディが最新の打撃となりました。
現時点では67勝67敗で勝率.500でワイルドカード枠でNO.5のポジションにつけておりますが、果たしてこの状況でプッシュをかけることができるのか?非常に厳しい状況となりました。
むしろ、ALのワイルドカード枠圏外で望みをもっているのは、NO.4のロイヤルズ。
ロスター調整をすれば終了
レンジャーズがもしも白旗を掲げれば、複数の選手をウェイバー公示し、サラリー削減にはしると思われます。ちょうど2023年のエンゼルスがやったように。
レンジャーズ、分岐点に立っております。
お読みいただき、ありがとうございました。
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