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【MLB2023】ジェイコブ・デグロム、右肘UCLの断裂修復手術でシーズン・エンディングへ

やはりという結果に

 今季からレンジャーズで投げているジェイコブ・デグロムですが、現地2023年6月6日、右肘の尺側副靭帯(UCL)の断裂を修復する手術を受けることが発表されました。

 怪我で離脱しがちであったデグロムですが、今季、前腕部のハリを訴えたときに、こうなることはある程度は予想は出来ていたのも事実です。

現時点ではトミージョン手術が確定した訳ではない

 なお、GMのクリス・ヤングは、この手術が再建型のトミー・ジョン手術になるのか、それとも別の手術になるのかは明言しておりません。しかし、トミージョン手術になるだろうとの見方は避けられません。トミージョン手術なら復帰まで1年半ほどの期間を要することから、来季の大半も失うことになります。現時点では今季のシーズン・エンディングは決定です。

現役最高の投手の1人

 ジェイコブ・デグロムは1988年6月19日生まれの34才(現地2023年6月7日時点)。まもなく35才になります。2010年のアマチュア・ドラフトのメッツ9巡目指名でプロ入りした右腕は、2014年にメジャー・デビュー。この年、22試合に先発し、140.1イニングを投げ、9勝6敗、ERA2.69、SO 144でNL ROYを受賞しました。

 そこからのデグロムはご承知の通りです。

 デビュー2年めの2015年には14勝8敗でERA 2.54でサイ・ヤング賞投票で7位に。2017年は15勝10敗で、ERA 3.53でサイ・ヤング賞投票で8位。

 そして2018年、2019年と2年連続でサイ・ヤング賞を受賞。短縮シーズンになった2020年も68イニングで104奪三振という素晴らしい成績をマーク。

  2021年は結果的に7月に離脱してしまいますが、離脱までの登板が驚異的な内容で、15試合に先発して最多失点はたったの3で、それが2試合だけ。そのうち自責点3は1度だけ。さらに、15試合いずれも被安打5以下。このうち被安打3のゲームが5試合、2ヒッター・ゲームが2試合、1ヒッターゲームが3試合と、とんでもないクオリティーを見せつけ、現役最高の投手と言われるほどでした。

【YOUTUBE】Jacob deGrom is UNREAL as he lowers his ERA to 0.54! (Records 10 Ks and drives in 2!)

 2014年から2021年途中まで8シーズンで、1261.2イニングを投げ、77勝53敗でERA は2.50、奪三振数は1505をマークしました。

過去にトミージョン手術

 2021年7月、メッツの幹部サンディー・アルダーソンとデグロムの間で右肘のUCLの状態について両者で状態に関する見解の食い違いを見せたことがありました。ただ右肘に問題があるのは明らかでもありました。

 デグロムはプロスペクト時代の2010年10月にトミージョン手術を実施した履歴があります。今回、もしトミージョン手術となれば2度めの手術ということに。

 2022年、マックス・シャーザーとの最強デュオが実現したメッツでしたが、デグロムはスプリングトレーニング中に肩甲骨のストレス反応に見舞われ、復帰までに時間を要しました。2022年は11試合、64.1イニングの登板にとどまり、最強デュオも不発に終わってしまいました。ERAは3.08。

2023シーズン

 そして、レンジャーズ初年度の2023年は6試合に登板し、ERA 2.67をマーク。

 4月末に肘の炎症でIL入りとなり、ちょうど2023年6月6日、60 Day ILに移されていました。この時点で不吉なサインが見てとれていました。

契約への影響

 メッツとは2019年の開幕前に5年/$137.5M(2019-23) でサインしたジェイコブ・デグロムは、2023年の$30.5Mと2024年の$32.5Mクラブオプションを残したまま、オプトアウトを行使。かなり前からオプトアウトを発動してFAマーケットに出ると公言していて、その通りに実行しました。

 そして、2022年12月にレンジャーズと以下の契約でサイン。

  • 5年/$185M (2023-2027) + 2028 コンディショナル・オプション

 サラリーと2028年のオプションの部分だけ抜粋するとご覧の内容と言われています。

  • サラリー
    • $30M (2023)
    • $40M x 2 (2024-25)
    • $38M (2026)
    • $37M (2027)
    • 【追記】2028年のコンディショナル・オプションの内容は以下。
      • クラブオプション
      • 2023-26年にデグロムがトミー・ジョン手術、または右肘や肩の故障で、シーズン中に連続130日、またはMLSにカウントされる期間中に連続で186日ILに登録された場合、2028年のクラブオプションが発動される。
        • クラブオプションは、以下の条件で発動:
        • 契約期間中、デグロムがサイ・ヤング賞の投票で3回以上トップ5に入るか、725イニング以上投げた場合は$37M
        • 契約期間中にデグロムがサイ・ヤング投票のトップ5に1度でも入るか、625イニング以上投げた場合は$30M。
        • デグロムが高い成績のしきい値に満たない場合は$20M
      • プレーヤー・オプション
        • 2028年のプレーヤーオプションが発動される場合は$37M:
        • 1) 2028年のクラブオプションの条件が満たされない。
        • 2) デグロムが2027年に160イニングを投球し、かつ
        • 3) デグロムが2027年のサイ・ヤング投票で上位5位以内に入り、かつ
        • 4) メディカルチェックにより、デグロムが2028年に向けて健康であると判断された場合。

 今季だけで$30Mのサラリーです。さらに、大半を休むであろう2024年は$40Mのサラリー。これは本人も心が痛むでしょうね。大型契約は怪我をした時がつらいです。クラブ側も本人も。

 まだ先の話しになりますが、デグロムの怪我のリスクを考えていたレンジャーズは、交渉の過程でオプション・イヤーのみ契約に反映させました。

 今回、クラブ・オプションの要件にピッタリと当てはまる自体になったので、2028年は$20Mのクラブ・オプションということになりそうですが、ただし、デグロム側にとっての救済策も入っており、それがクラブオプション発動の2番目の黒丸で、「契約期間中にデグロムがサイ・ヤング投票のトップ5に1度でも入るか、625.0イニング以上投げた場合は$30M」となります。あるとしたら、これになるでしょうね。

比較的高齢でのトミージョン手術について

 デグロムとレンジャーズにとっての問題は、仮にトミージョン手術となった場合、それによって以前のパフォーマンスに戻れるかどうかという点にあります。

 高い年齢でのトミージョン手術の復帰例としては、ジャスティン・バーランダーが上げられます。バーランダーは2020年9月にトミージョン手術を実施。この時の年齢は37才。

バーランダーのケース

 2021年に全休し、復帰したのは2022年4月9日のこと。前年末のロックアウトの影響で2022年の開幕は若干遅れましたので、9日においてもクラブとしての試合数はまだ3試合目でしたから、開幕には間に合ったというところです。

 バーランダーが費やしたのは、1年6ヶ月強。手術とシーズン開始時期の関係からそうなったのですが、復帰まで十分にリハビリをすることが出来たバーランダーは、2022年、39才のシーズンで自身3度めのサイ・ヤング賞を受賞。最高のシーズンを過ごしました。そしてメッツと記録的なディールでサイン。

 今回、デグロムがトミージョン手術となった場合、35才での手術となり、バーランダーの時よりも2才ほど若いです。

 ただ、懸念点はバーランダーは1回目のトミージョン手術だったのに対して、デグロムは2度目の手術になるいう点です。トミージョン手術は2度めの場合、以前の状態に戻す成功率が低くなる傾向があると言われています。バーランダーのように行くかどうかはわかりません。

 なお、トミージョン手術を2度実施している投手としては、今季レンジャーズで大活躍しているネイサン・イオバルディがそうです。2007年と2016年に実施しています。また、今季はカブスで投げているジェイムソン・タイヨンも2度実施した投手で、2014年と2019年に行っています。

 球界最高の投手の1人が、今後1年以上見られないというのはやはり寂しいですね。

 お読みいただき、ありがとうございました。

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