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【MLB 2023】「天才」デービッド・スターンズ退任後のブルワーズのフロント・オフィス

ベースボール・オペレーションのトップ交代

 現地2022年11月10日のFA(フリーエージェント)の解禁を控え、契約のオプションをどうするのか、選手側、クラブ側ともにかなり慌ただしい動きになっています。FA解禁までは所属クラブが独占交渉権を握っているため、最後の努力を行っている最中です。

 GM職が変わったクラブはロイヤルズなど複数ありますが、中でもクラブ内に大きなインパクトを残したのはやはりブルワーズではないでしょうか。

 「天才」と言われたデービッド・スターンズ(David Stearns)が現地2022年10月27日にベースボール・オペレーションズ部門のプレジデント職を辞しました。

デービッド・スターンズとは

 デービッド・スターンズは1985年2月18日 生まれの37才。選手ではありません!フロント・オフィスのBaseball Operations部門のトップがこの年齢です!これだけでもいかに切れる人物かがおわかりいただけると思います。

 スターンズは2007年にハーバード大学を卒業し、政治学の学士号を取得。ニューヨーク出身で、現在は妻と2人の子どもとともにミルウォーキーに在住しています。

 ハーバード在学中からすでにMLBに携わっており、2005年から2006年の夏にかけてピッツバーグ・パイレーツでインターンシップを経験。大学卒業後の2007年にはアリゾナ・フォール・リーグで野球運営担当のアシスタント・ディレクターを務め、2008年夏にはニューヨーク・メッツでインターンシップを経験したりしています。

 2008年から2011年までは、コミッショナー事務局(MLBセントラルオフィス)で労使関係のマネージャーを務め、年俸調停プロセスを支援し、ユニフォームの選手契約を扱い、MLBの労使協定の交渉チームのメンバーとして活躍しました。

 その後、2011年12月から2012年11月まではクリーブランド・インディアンスでベースボール・オペレーションのダイレクターとして従事。契約交渉、サラリー分析、チーム戦略、ロスター管理などを担当しました。

26才でアシスタントGM

 そしていよいよ本領を発揮し始めたのがアストロズ時代です。

 スターンズは2013年から2015年までの3年間、ヒューストン・アストロズでアシスタントGMを務め、このときすでに経営陣の主要メンバーとして、分析、管理、選手育成、スカウティングなどベースボール・オペレーションの全領域を経験。スキルと経験にさらに磨きをかけました。ぴかぴかです。

30才でGM

 2015年9月21日、デービッド・スターンズはブルワーズに移籍。その約2週間後の2015年10月5日にフランチャイズ史上9人目のゼネラルマネジャー(GM)に正式に就任。なんと30才のGMの誕生と相成りました。

スターンズ就任後のブルワーズ

 スターンズを雇う前、ブルワーズはクラブ創設の1969年まで遡ってポストシーズンには4度しか出場していませんでした。

  • 1981: ALイースト 地区優勝→ALDSでヤンキースに敗れ敗退
  • 1982: ALイースト 地区優勝→WSでカージナルスに3勝4敗で敗退
  • 2008:NLセントラル2位→NLDSでフィリーズに敗れ敗退
  • 2011: NLセントラル地区優勝→NLCSでカージナルスに敗れ敗退

 クラブ創設11年目の1981年に初めて地区優勝を果たしてポストシーズンに進出。翌年の1982年には地区連覇でワールドシリーズまでたどり着くも惜しくもチャンプを逃しました。この時はスターンズは生まれてさえいません。そこから27年を経て2008年に久しぶりにポストシーズンに進出。2011年には1982年以来の地区優勝となりましたが、2012年から2013年までは勝率5割のラインをさまよう状態に。

 2015年秋にスターンズがGMに就任。2016年はまだ変化が起きず、4位と低迷。これはもう致し方ありません。変化が生まれのは2017年から。このシーズンは5シーズンぶりに勝率5割超えを果たして地区2位に入り、手応えを掴みました。以降はこのような具合です。

  • 2018: 地区優勝→NLCSでドジャースに3勝4敗で敗れる
  • 2019: 地区2位→NLWCでナショナルズに敗れる
  • 2020: 地区4位→ワイルドカードシリーズでドジャースに敗れる
  • 2021: 地区優勝:NLDSでブレーブスに敗れる

 2015年まで47年で4度のポストシーズンが、2016年以降は2022まで7年で4度のポストシーズン進出。しかも4年連続です。明らかにスターンズがもたらした効果ですね。

 スターンズは2019年1月23日にベースボール・オペレーション・プレジデントに昇格を果たしました。この時、まだ33才です!

 それゆえ、スターンズはMLBのフロントオフィスで最も尊敬されている経営者の一人として名声を築きました。

 しかし、上述の通り、スターンズはベースボール・オペレーションのトップを辞したのです。契約は2023年シーズンまで残っていたにも関わらず。

ジョシュ・ヘイダーのトレードで地区優勝を逃す

 そうなってしまったのはやはり、2022年7月のトレードデッドラインの動きが大きく影響しました。

 クローザーのジョシュ・ヘイダーをパドレスにトレード。それまで6月19日から首位を守ってきたにもかかわらず、それ以降は8月6日に首位を陥落。最後の最後にポストシーズンへのわずかな扉が開いたにも関わらず、そのチャンスを掴むことが出来ずにポストシーズン進出は4年連続でストップということに。

 ジョシュ・ヘイダーは2023年終了後にFAとなる予定でしたが、その前に手を打っておこうと考えたのが悪い方に出てしまいました。おそらくクローザー・ロールを担えると踏んでいたエバー・ベンダーこと、デビン・ウィリアムスはクローザーではぱっとせず、最後の最後に競り負けた要因となってしまいました。

 ファンを怪訝にさせたのはその後の処理もあります。ディネルソン・ラメットをトレードで獲得したにも関わらず、DFAにしました。なんのためのヘイダーのトレードだったのかと。

 優勝がそこまで見えていたのに自滅した格好に非難が集まったのでした。

トレードで作り上げてきたクラブ

 ブルワーズはドラフトで獲得したブランドン・ウッドラフ、コービン・バーンズが大いに機能。素晴らしいローテーションを形成しました。

 一方でロースターを見てみると、MLBで最もトレードに依存したクラブの1つであることも見えてきます。フレディー・ペラルタ、エリック・ラウアー、エイドリアン・ハウザーに加えて、ウィリー・アダムス、ラウディー・テレーズ、ハンター・レンフロー、ルイス・ウリアスといずれもトレードで獲得した選手です。

 ジョシュ・ヘイダーもそうです。2015年にアストロズからエイドリアン・ハウザー、ブレット・フィリップス、ドミンゴ・サンタナらとともに、ブルワーズに移籍してきました。ブルワーズからアストロズへはマイク・ファイヤーズ、カルロス・ゴメスが遺跡。そして余談ではありますが、この時のマイク・ファイヤーズが後にアストロズのサイン・スティーリングを暴露することになります。ちなみにジョシュ・ヘイダーはもともとはオリオールズのドラフト・ピック。ドラフトの1年後にアストロズへトレードとなりました。

後任はマット・アーノルドに

 スターンズの後任は、スターンズの直下でベースボール・オペレーションのバイス・プレジデントであり、GMであったマット・レイノルズが担うことになりました。ベースボール・オペレーションのトップの交代です。

 43歳のアーノルドは20年以上もベースボール・オペレーションに携わった人で、レイズの人事部長を務めたほか、ドジャース、レッズ、レンジャーズでスカウティング、選手育成、選手分析などさまざまな役割を担ってきた経歴の持ち主。2020年にGMのタイトルを得て、フロントオフィス探しで他クラブからの関心を集めていた人物。このひとしかいないという人事でもありました。

 現地2022年11月8日にコルテン・ウォンの2023年のクラブ・オプションを行使していますが、これはマット・アーノルドの仕事です。

スターンズはどこかに請われる?

 デービッド・スターンズはベースボール・オペレーションのトップからは退くものの、ブルワーズには引き続き残ることになっています。記者会見においても「どこにも行かない」と明言しました。

 とは言え、やはり彼は他クラブからするとどうしても欲しいターゲットで、例えば、メッツは過去2回のオフシーズンでスターンズを誘っておりましたが、これは面接の段階でブルワーズから拒否されています。現在、メッツは元エンゼルスのビリー・エプラーをGMに据えていますが、実はベースボール・オペレーションのトップは空席のまま。スターンズはニューヨーク出身でもありますし、メッツは虎視眈々と狙っています。

 そのほかからもオファーはつづくでしょう。

 以上、ブルワーズのフロント・オフィスの大きな動きについて記しました。

 お読みいただき、ありがとうございました。

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