こんなに激しい応戦は久しく見ず
現地2022年6月26日のマリナーズ@エンゼルス戦で大乱闘があったのはご承知のとおりです。
乱闘も様々で、近年ではルーグネッド・オドーアがホセ・バティスタに強烈な一発をお見舞いしたのもなかなか忘れられない出来事ですが、筆者の中では現地2019年7月30日のパイレーツ@レッズ戦で起こったアミール・ギャレットの相手ベンチ直行案件がかなりのインパクトを保ったままです。
今回の件はそれに匹敵するほどの激しいものになりました。なんと言ってもCOVID-19のパンデミック以降、相手への接触は極力控えるというのが定着した後の出来事でしたから、久々のインパクトのある事件となりました。
この日の出来事
今回の乱闘はとにかく早いイニングで起こりました。
先発はマリナーズがマルコ・ゴンザレス、エンゼルスはアンドリュー・ウェインツ(Andrew Wantz)。エンゼルスはオープナーのつもりでリリーバーのウェインツを起用しています。
事の顛末を知った上でVTRを見ると、アンドリュー・ウェインツは投球練習の段階からもう可哀想なくらいの悲壮な使命感を帯びてマウンドに上がっておりましたね。
- 1回表、2番フリオ・ロドリゲスに対し、初球、いきなり後頭部をかすめるほどの挑発的なボールを投げたウェインツ。マリナーズ・ベンチも報復じゃないか!というスコット・サービス監督のジェスチャーに対し、エンゼルスのフィル・ネヴィン暫定監督は「どこがだよ!」というような感じで返しておりました。報復というのは後述します。1回表はアンパイアが集まりましたが、このまま収まりました。
- 2回表、先頭のジェシー・ウィンカーに対する初球、ウェインツは明らかに故意にウィンカーの腰に死球。これで弾けました。ベンチからの言葉を受けたジェシー・ウィンカーがエンゼルスのダグアウトへ向かい、アンソニー・レンドンが手術した右手首にギプスをはめた姿で、左手でウィンカーを払うように接触。これで乱闘がスタートしました。後はご覧の通りです。
計8名が退場処分に
乱闘が解けた後、なかなかゲームが始まりませんでしたが、20分も中断していなかったようですね。筆者はもっと時間がかかったのかと思っていました。
ゲーム中に下された退場処分は以下の選手、スタッフ達です。
マリナーズ | スコット・サービス監督 ジェシー・ウィンカー フリオ・ロドリゲス J.P. クロフォード |
エンゼルス | フィル・ネヴィン監督 ライセル・イグレシアス ライアン・テペラ アンドリュー・ウェインツ |
処分発表後、ライセル・イグレシアスが納得行かないとして、ひまわりの種をグランドに投げつけたというおまけまでありました。これはアンパイアへのフラストレーションだったようです。
ちなみに、ジェシー・ウィンカーもライセル・イグレシアスも元レッズですね。
伏線その1 E・スワンソン-M・トラウト
これは一体、何が伏線でこうなったのか?というと、まず前日25日のゲームが挙げられます。マリナーズが5-3のスコアでエンゼルスを下したのですが、9回裏、2アウト、ランナー1塁でマイク・トラウトに打席が回ってきました。
マリナーズのピッチャーはエリック・スワンソン。珍しく左手を大きく掻くように使う投手で、投げる角度からして右打者のインコースに抜けるメカニズムを持つ投手です。
スワンソンは2球ともmid-90mphのファストボールをトラウトの頭近くに投げました。結局、2球で申告敬遠にはなったのですが、トラウトはゲーム後、頭近辺に投げられたことで怒りが収まらなかったようです。
これがそもそもの大きな伏線です。
ウェインツは同じようなコースのボールを1回表にフリオ・ロドリゲスに投げたのでした。
また、マリナーズはゲームに勝った後、いつも通りダンスを決めていたのです。これも言ってみれば、「少し前にビーン・ボールを投げた後なのに!」というのがエンゼルス側にはあったでしょう。おそらくジェシー・ウィンカーへの死球はこの報復。
シアトルでの5連戦にも火種
もともとエンゼルスーマリナーズは同地区ライバルゆえ、日程も多く組まれています。同地区との対戦が多いのは、1つには移動の距離を短くというのもありますし、なんと言っても、近隣の対決は燃えるという考えに基づいています。よって接触回数が多ければ、摩擦も生まれると。
少し前の6月16日からシアトルで始まったエンゼルス@マリナーズの5連戦を覚えておいででしょうか? その直前、エンゼルスは14連敗を喫し、監督も代わりました。フィリーズ→レッドソックス→メッツ→ドジャースと厳しい戦いを強いられていましたが、このシアトル5連戦でエンゼルスは息を吹き返し、4勝1敗で圧勝しました。
ローレンツェン→アップトンへの頭部死球
エンゼルスが5連戦で唯一敗れた現地2022年6月17日、この日はロビー・レイ登板日で、エンゼルスはマイケル・ローレンツェンが打たれ、1-8のスコアで敗れました。
このゲームでローレンツェンはアップトンの頭部に死球。MLBの滑るボールを批判したということがありました。この時は故意ではなかったのですが。
トラウトが大活躍した5連戦
ちなみにですが、先の5連戦はマイク・トラウトは、20打数6安打、5HR、9RBIと活躍。通算HR数332本の内、マリナーズ戦で53本というのが話題になりました。
だからと言って25日のビーン・ボールはこの報復ではなかったと思うのですが、トラウトはマリナーズにとって厄介な存在ゆえに、厳しいコースに投げるケースも出てくることはあるでしょう。
ライバル同士のこの対戦。今季はまだまだひと悶着あるかもしれませんね。
ゲームの方は、エンゼルスが2-1で勝利。試合後、決勝打を放ったデービッド・マッキノンは、このゲームの刺激を良いように利用し、より結束していきたいというような趣旨のコメントを発してしましたが、そのとおりで、エンゼルスは前を向いてアストロズを追うしかありません。それはマリナーズも同じですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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