2025-2026 オフシーズン・スタート
ドジャースの連覇、そして山本投手のMVPで幕を閉じた2025年のワールドシリーズ。今年はブルージェイズ、ドジャースともに譲らぬ戦いを演じ、シリーズはGm7にまでもつれ、大いに盛り上がりました。そのGm7が行われたのが現地11月1日で、試合展開がもつれて延長11回まで突入したため、ゲームセットは日をまたいで11月2日になりました。
2025年は11月2日にFA資格
毎年、ワールドシリーズ終了の翌日の東部時間午前9時をもって、資格のある選手、つまり、サービスタイムが6.0年以上ある選手がフリーエージェントとなります。
2025年のワールドシリーズ終了は正確には11月2日でしたが、ワールドシリーズGm7は11月1日で完結したとみなして、その翌日の11月2日が有資格者のFA日ということに。
11月2日から5日間は旧クラブとの独占交渉期間
ただし、これは11月2日はまだ選手のステータスがフリーエージェントとなっただけで、まだ新しいチームと契約することはできません。他クラブと契約できるのは5日後の11月6日からです。
それまでの11月2日から11月6日までの最初の5日間は独占交渉期間となり、フリーエージェントは直近に所属していたクラブとしか金銭面での交渉を行うことができません。この期間にオプトアウトするしない、クラブオプション、プレーヤー・オプション、ミューチュアル・オプションを行使するしないを決めているわけです。
現時点でアレックス・ブレグマンが正式にオプトアウトしたのこの期間のレッドソックスとの交渉の結果です。
この独占交渉期間中に再契約する選手は非常に少なく、現地2022年11月6日にエドウィン・ディアスがメッツとサイケ役したディールくらいしか目立ったものはありません。
だいたいは一旦はFA市場に出ます。
WS終了5日後(2025年11月6日)がFA解禁日
そしてワールドシリーズ終了から5日後、2025年の場合は現地2025年11月6日がFA解禁日となり、選手は他のクラブと金銭に関わる交渉をスタートできます。
QOの提示日(2025年11月6日)
また、この日(現地2025年11月6日)は同時にクオリファイング・オファー(QO)の提示日でもあります。
QOについて
クオリファイング・オファー(QO)については過去記事に複数まとめてありますので、下記をご参照ください。一応、大まかな概要だけを記載しておきます。
QOとは「FAとなる選手を旧所属クラブが優先的に引き止めることが出来る制度のこと。選手側も初FAで市場に出る際にまずは確実な1年契約の補償があるのがメリット。
提示される金額は毎年変動で年俸の上位125人の平均で算出される。オファーはクラブの独自の判断に依り、初FAであってもオファーされない選手もいる。
そしてオファーを受けた選手はQOを断り、市場に打って出ることも可能。QOを断り、他のクラブと契約した場合、獲得したクラブはドラフト指名権を手放さないといけない。そして出て行かれた側のクラブにはドラフトで指名権の補償がある。補償や手放す権利の内容は贅沢税超過の有無、レベニュー・シェアリングの受領の有無によって変わってくる」
2025年オフは22.025Mドル
2025年オフのQOの提示額は$22.025M。この金額は過去最高です。
QOを提示された選手
そして現地2025年11月6日、13名がQOをテンダー(提示)されました。番号は便宜上のものでランキングなどではありません。しかし、いい選手ばかりです。
- カイル・タッカー(Kyle Tucker) OF | カブス
- カイル・シュワーバー(Kyle Schwarber)OF/DH | フィリーズ
- ボー・ビシェット(Bo Bichette) SS/2B | ブルージェイズ
- フランバー・バルデス(Framber Valdez) LHP | アストロズ
- ディラン・シーズ(Dylan Cease)RHP | パドレス
- レンジャー・スアレス(Ranger Suarez)LHP | フィリーズ
- エドウィン・ディアス(Edwin Diaz)RHP | メッツ
- ザック・ギャレン(Zac Gallen)RHP | Dバックス
- 今永 昇太(Shota Imanaga) LHP | カブス
- マイケル・キング(Michael King)RHP | パドレス
- トレント・グリシャム(Trent Grisham) OF | ヤンキース
- グレイバー・トーレス(Gleyber Torres)2B | タイガース
- ブランドン・ウッドラフ(Brandon Woodruff) RHP | ブルワーズ
期限
そしてQOを提示された選手は11月18日までにこの1年契約のオファーを受け入れるか、拒否してフリーエージェントとなるかを決定する必要があります。選手はこの期間を利用して、他球団からの関心度を測ることができます。
選手がQOを受け入れた場合、フリーエージェントとして契約した扱いとなるため、来年6月15日までは本人の同意なしにトレードされることはありません。一方、QOを拒否した場合、その選手と契約する球団は、収益分配金やぜいたく税の状況に応じて、ドラフト指名権や海外選手契約金の一部を喪失する可能性があります。
QOを提示された選手の2025年のサラリー
ざっと旧契約と2025年のサラリーをまとめてみます。
- カイル・タッカー(Kyle Tucker) OF | カブス
1年/$16.5M (2025) - カイル・シュワーバー(Kyle Schwarber)OF/DH | フィリーズ
4 年/$79M (2022-25)で、2025年は$20M - ボー・ビシェット(Bo Bichette) SS/2B | ブルージェイズ
3 年/$33.6M (2023-25) | 2025: $16.5M - フランバー・バルデス(Framber Valdez) LHP | アストロズ
1 年/$18M (2025) - ディラン・シーズ(Dylan Cease)RHP | パドレス
1年/$13.75M (2025) - レンジャー・スアレス(Ranger Suarez)LHP | フィリーズ
1年/$8.8M (2025) - エドウィン・ディアス(Edwin Diaz)RHP | メッツ
5 年/$102M (2023-27) + 2028 オプション | 2025 :$17.5M
2026:$18.5M プレーヤーオプション(2027年以降は省略) - ザック・ギャレン(Zac Gallen)RHP | Dバックス
1年/$13.5M (2025) - 今永 昇太(Shota Imanaga) LHP | カブス
4年/$53M (2024-27) |2025: $13M
2026: $15M プレーヤーオプション or $57M クラブ・オプション($20M: 2026-27, $17M: 2028 )
2027: $15M プレーヤー・オプション - マイケル・キング(Michael King)RHP | パドレス
1年/$7.75M (2025) + 2026 $15Mミューチュアルオプション($3.75Mバイアウト) - トレント・グリシャム(Trent Grisham) OF | ヤンキース
1年/$5M (2025) - グレイバー・トーレス(Gleyber Torres)2B | タイガース
1年/$15M (2025) - ブランドン・ウッドラフ(Brandon Woodruff) RHP | ブルワーズ
2年/$17.5M (2024-25) + 2026 $20Mミューチュアル・オプション($10M バイアウト)
ご覧のような内容です。レンジャー・スアレスやザック・ギャレンらは今回が初FAなので、金額はおとなしめでした。すでにFA資格に到達していたものの、QOは今回が初というカイル・シュワーバーらはやはり高めとなっています。
今永投手はかなり特殊な契約でしたので、割と詳細に記載しました。2026年はプレーヤー・オプションで今永投手に選択権があったので、今回は市場に出てみたというところです。
ブランドン・ウッドラフはFA資格到達時がトミー・ジョン手術のリハビリだったということで回復を見込んだショート・タームでサインしておりました。バイアウトの金額がものすごいですが。
ビシェットは予算次第
ワールドシリーズでIL上がりで強行出場したボー・ビシェットはトロントが大好きな選手ですから、残る可能性が大です。一旦QOを受諾した後に、契約延長で上書きというパターンが想像できます。
ただし、ブルージェイズはゲレロ・Jr.に14年/$500M (2026-39)というメガディールを与えたばかり。ゲレロとビシェットは同じ2世選手として成長してきただけに同じような金額で報いたいとも思うでしょう。そうなるとメガディールが2件になりますから、かなり財布を圧迫します。
果たして予算を割けるのか、これ次第かと。ゲレロに使った予算はそもそも大谷資金だったという見方もできますので、ビシェット分をオーナーがどう判断するのかも見ものです。
クラブ側のリスク
QOのサラリーが$22.025Mですので、参考までに上記のように2025年のサラリーも記載しました。
たとえば2025年のサラリーが$5Mのトレント・グリシャム本人はこのFAでマルチイヤー・ディールを希望していると思われ、期限までに市場の動向をチェックします。それで、あまりいい答えでない場合はQOを受諾する可能性があります。そうなるとクラブ側も市場よりも高い単価で再契約するというリスクを孕みます。
もっとも、それを承知でオファーしているのですが、いささかギャングル感も否めません。それでもオファーしたのは、QO提示選手が他クラブとサインした場合、ドラフト指名権が付いてくる制度があるため・・・そういう動機もありと見ていいでしょう。ルールはルールですから。
ただ、ヤンキースを出るとのびのび活躍してしまう傾向は昔からあり。ここに名前のあるグレイバー・トーレスの2025年がまさにそうでした。よってグリシャムはこの中では少し落ちてしまいますが、需要は大いにあると見ていいでしょう。
QO資格ありも提示無しの選手
QOを提示されるには資格が必要なのですが、有資格でありながら提示されなかった選手はこちらです。
【QOとなる対象選手】
- 過去にQOの提示なし(=1度オファーを受けたら、2度めのQOはない)
- シーズン全期間を通して所属球団にいること。(移籍してきた人は対象外)
- ルーカス・ジオリト(BOS)
- ロベルト・スアレス(SDP)
- デビン・ウィリアムス(NYY)
- ジェフ・ホフマン(PHI)
- ホルヘ・ポランコ(SEA)
ヤンキースはデビン・ウィリアムスにQOを出せば、間違いなく他クラブとのディールが決まり、ドラフト指名権が獲得できたでしょうに。ちょっとよくわらないんですが。レッドソックスもルーカス・ジオリトに出しても良かったのでは?とも思います。
なお、メッツからFAとなったピート・アロンゾは2024年オフにQOを提示されましたので、今回は資格なしです。
お読みいただき、ありがとうございました。




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