ドジャース戦で途中降板したサンドバル
現地2024年6月24日、日本のMLBファンの間でも知名度の高いエンゼルスのパトリック・サンドバル(Patrick Sandoval)の肘の状態が判明しました。
パトリック・サンドバルは現地2024年6月21日のハイウェイ・シリーズのGm1で先発。3回裏に大谷選手に四球を与えたところで降板。左肘を傷めたことは明らかでした。
このゲームが終わった時点での発表は左前腕部の張りということでしたが、傷めた直後のあの痛がりよう、そして発表まで時間がかかっていたことからこれはちょっとまずいという印象を持っていました。より精密な検査を実施していることは明らかでしたので。
かなりの重症
そしてこの日、精密検査の結果が明かされ、パトリック・サンドバルは左腕の屈筋断裂とUCLの断裂を患っていることが明らかとなりました。UCLはUlnar Collateral Ligamentで、「アルナー・コラテラル・リガメント」と発音し、日本語では「尺骨側副靭帯(しゃっこつそくふくじんたい」のこと。トミー・ジョン手術を実施する投手が患う箇所として周知の腱です。今回はかなり重度。
2箇所!?
通常、トミー・ジョン手術の前兆とも言えるのが前腕部、あるいは屈筋腱の張り。これが出ると要注意です。場所のイメージとしては大雑把に言うと肘の内側で握力を使うと盛り上がる筋肉の辺り。実際に症状が出る箇所は投手によって違うのですが、あくまでもイメージとして。
この箇所に違和感があれば、クラブ側は神経をピリつかせ、慎重な判断を下します。早期に発見し、しばらく休んで元通り投げるというケースもあります。レッドソックスのブライアン・ベイヨーやアストロズのフランバー・バルデスなどは今春に前腕部に張りを覚え、即座に投球をストップ。様子見しながら徐々に負荷を上げて行き、今では二人ともローテーションを回しています。
パトリック・サンドバルのケースですが、屈筋とUCLの2箇所という非常に重い症状だったことがわかりました。詳細はわかりませんが、結構近いところで2箇所に断裂が見られたのでは?と思います(憶測です。すみません)。いずれにせよ、重いです。
トミー・ジョン手術必至
現段階ではトミー・ジョン手術が決定という訳ではありませんが、これはもうそうなるのは必至。
再建型と言われるトミー・ジョン手術となるのか、人工靭帯を入れるインターナル・ブレース手術になるのかはまだわかっていません。
サンドバル、来季の大半も失う
再建型のトミー・ジョン手術の場合は復帰まで通常14-18ヶ月。インターナル・ブレース手術の場合、それよりも数ヶ月早く復帰出来ることになりますが、ほぼ7月に入ろうかという今の時期の手術となると、18ヶ月後は2025年12月。慎重なスケジュール感だと来季も失うことに。
もしも2025年9月に復帰したとしたら、15ヶ月。復帰を最速で見積もったとしてもサンドバルは2025年の大半を失うことはほぼ確実です。
これはサンドバル個人にとっても、エンゼルスにとっても、非常にダメージの大きい離脱となります。エンゼルスは安定した投手陣の確保に苦労しており、サンドバルはサウスポーとして数少ない光明でもありました。
パトリック・サンドバルの実績
パトリック・サンドバルは2019年にメジャー・デビュー。もともとはアストロズの11巡目指名。メキシコ代表として投げましたが、アメリカ出身でカリフォルニア州の高校を卒業しています。2018年のトレードデッドラインでエンゼルスが当時大谷選手の女房役だったマーティン・マルドナードをアストロズにトレードに出した際に獲得したのがこのパトリック・サンドバル。これはパトリック・サンドバルにとって運の尽きでした。いやいや、大谷選手と過ごす時間が出来たのは良かったということでしょう。
Year | Age | W | L | ERA | G | GS | IP | ERA+ | FIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 22 | 0 | 4 | 5.03 | 10 | 9 | 39.1 | 92 | 4.59 |
2020 | 23 | 1 | 5 | 5.65 | 9 | 6 | 36.2 | 81 | 5.92 |
2021 | 24 | 3 | 6 | 3.62 | 17 | 14 | 87.0 | 124 | 4.03 |
2022 | 25 | 6 | 9 | 2.91 | 27 | 27 | 148.2 | 138 | 3.09 |
2023 | 26 | 7 | 13 | 4.11 | 28 | 28 | 144.2 | 110 | 4.18 |
2024 | 27 | 2 | 8 | 5.08 | 16 | 16 | 79.2 | 82 | 3.85 |
Total | – | 19 | 45 | 4.01 | 107 | 100 | 536.0 | 108 | 3.96 |
ローテーションとして本格稼働し始めたのが2021年。ここまでのキャリアで二桁勝利はありませんが、2022年、2023年といずれも150.0 イニング近くを投げ、しかも2021年からのERA+はいずれも100超え。目に見える実績以上にローテーションとして稼働してきたのがわかります。
サンドバルの今後
パトリック・サンドバルのMLSは2024年1月時点で3.149。サンドバルはスーパー2ステータスで選手として2022年以降に調停資格を得ています。スーパー2というのは、調停資格の3年より1年前倒しで調停ステータスを得ること。ゆえにサラリーはメジャー最低年俸以上の金額で、2023年は$2.75M、2024年は$5.025M。
この怪我でTDLでの移籍は無くなった?
調停シーズンはあと2シーズン残っており、2026年終了後にFAとなる見込み。エンゼルスは今シーズンも不調で、優勝争いに加わる見込みがないため、パトリック・サンドバルはこのまま行けば、他クラブへのトレード候補でした。他クラブにすればあと2年管理下におけるステータスゆえ、余計に魅力。それこそ、チームが変わればサンドバルの勝利数も上がっていたでしょう。
ただ、この大怪我でこのトレードデッドラインでの移籍もほぼ潰えたことになるかもしれません。
エンゼルスはロースター枠が必要な場合、サンドバルを60Day ILに移すことが出来ます。ただし、オフシーズンには一旦復帰させる必要があります。そこで結局1枠使うことになります。
サンドバルはサラリーが高い分、このオフはひょっとしたら、ノンテンダーFAになるかもしれません。怪我の間にノンテンダーを出すのは鬼の所業ですが、これまでもそういうケースはあります。
パトリック・サンドバルは2025年10月の誕生日で29歳。怪我がなければ31才でFAで、マルチイヤー・ディールも狙えるいい条件が整いつつありました。エンゼルスがこのオフ、どういう処遇をするのかが注目ですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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