右肩の血栓の処置
フィラデルフィア・フィリーズのエース、ザック・ウィーラーが投球肩付近の血栓が原因で15 Days ILに入ったのは現地2025年8月17日のこと。その翌日の2025年8月18日(月)にそれを除去する手術を実施。
これにより、深刻な健康上の懸念が和らいだザック・ウィーラーは回復に向け意欲を出し、具体的な復帰時期を特定しようとしておりました。ウィーラーはポストシーズンで投げる気満々でしたから。
ただ、メディカル的にはPSでの登板というのはスケジュールとしてはそもそもハードルが高かったようです。もちろん、患部の驚異的な回復という要素も無きにしもあらずでしたが、投球肩だけに経過をしっかり診る時間も考えるとそもそも急ぐことにメリットはなかったようです。
新たな症状が発覚!
そんな血栓除去手術から約1週間が経過した現地2025年8月23日、さらなる衝撃ニュースが発覚。フィリーズからの公式発表によると、ザック・ウィーラーはなんと「静脈性胸郭出口症候群(venous thoracic outlet syndrome )」、略称TOSと診断されたようなのです。そして今後数週間以内に胸郭出口減圧手術を受けることが推奨されているということでした。
ウィーラーの今後
そうなると、今を一旦犠牲にしてでも手術に踏み切った方が今後のウィーラーにもベターであり、やはり手術に舵を切ると思われます。
よって、ウィーラーの2025年シーズンは終了という線が濃厚であると見た方が良さそうです。
手術をした場合、回復スケジュールは約6~8ヶ月と見られ、9月に手術したとすると6か月だと2026年のスプリング・トレーニングからの復帰。8か月なら2026年のシーズン・デビューが少しずれこむくらいになるか?と思われます。
TOSの例
静脈型TOS(胸郭出口症候群)の例としては元Dバックスで、このトレードデッドラインでアストロズに移籍したメリル・ケリーの例が挙げられます。
メリル・ケリーは2020年9月に静脈性TOS手術を受け、2021年シーズンの開幕に間に合うように準備を整え、実際に2021年シーズンの開幕に間に合いました。2021年4月2日(Dバックスの開幕2戦目)に登板し、4.0イニングで3失点を喫したものの、その後は中5日を軸に、ときには中4日でローテーションを回し、27先発で158.0イニングを投げ、7勝11敗、ERA 4.44をマーク。十二分に復帰シーズンをこなしております。
メリル・ケリーはさらに2022年には33先発、200.1IPで13勝8敗、ERA 3.37をマーク。2023年も30先発をこなし、Dバックスのローテーションを支えました。2024年は13先発、2025年はDバックスとレンジャーズで27先発をこなしています。
メリル・ケリーが最も成功した例だったので、彼のケースを挙げてみましたが、ほかにもクリス・アーチャー、元カージナルスのクローザーのトレバー・ローゼンタールもTOSを患った投手です。
個人差というものがあるにせよ、ザック・ウィーラーも手術を行うメリットの方が大きく、フィリーズのフロントもそのように決断すると思われます。
なお、TOSには静脈性TOSと神経性TOSがあり、後者は神経に関連する症状で、スティーブン・ストラズバーグのキャリアを終了させたものです。
フィリーズはなんとか回して行く!
2025年の残りシーズン及びポストシーズンも含めてザック・ウィーラーを失うことは、フィリーズにとって大打撃なのは間違いないところです。
ウィーラーは2025年は24先発で149.2イニングを投げ、ERA 2.71をマーク。この数字だけでも彼の存在感の大きさを物語っております。今季は 35歳のシーズンですが、まだまだ衰えなど感じさせません。もっとも、今回の血栓とTOSがキャリアに危うい影を落としかねない要素なのは間違いないところで、ゆえに2025年の残りを犠牲にしてでもまずは治療に専念してもらいたいところでもあります。
ウィーラーは、2020シーズンを前にフィリーズと5年/$118M (2020-24)の契約でサイン。さらに、2024年3月に3年/$126M (2025-27)の契約延長にもサイン。今季はその延長契約の1年目です。
残り2年を有効に使うためにも手術が最良の選択とも言えそうです。
SP
フィリーズはクリストファー・サンチェス、レンジャー・スアレス、ヘスス・ルザルド、タイワン・ウォーカーをはじめ、ウィーラーのILの穴を埋めるべく復帰させたアーロン・ノーラもおり、大エースのザック・ウィーラーが不在でもなんとか5人ローテーションを組めております。
2026年に向けてはレンジャー・スアレスが今オフでFAとなりますが、プロスペクトのアンドリュー・ペインターのローテーション入りも視野に入れて育成していくことでしょう。
ブルペン
ブルペンですが、8月15日に足首にカムバッカーが直撃してゲームを離脱したヨアン・ドゥラン(Jhoan Duran)は8月17日にはマウンドに。その後も中1日は最低でも空けて登板しています。
また8月20日には左腕のホセ・アルバラードも復帰済み。中継ぎはオライオン・カーカリングが機能しておりますし、先発が作ったゲームで逃げ切る体制もしっかりと確保。他のクラブと比べてもかなり優秀です。
あとは打撃がなんとかカバーして、NLイーストの地区優勝、そしてワールドシリーズへと進みたいところですね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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