正捕手ウィル・スミスの怪我
現地2025年9月20日、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はドジャー・スタジアムで行われたジャイアンツ戦を前に、正捕手ウィル・スミスの怪我の状況を追加説明。なかなか改善しないことから、より精密に画像検査を実施したところ、ヘアライン・フラクチャー(hairline fracture)を発症していることが判明しました。
ファウルチップが右手に
ウィル・スミスは、現地2025年9月3日にPNCパークで行われたパイレーツ戦に先発捕手として出場。2回裏にエメット・シーハンが投じた3球目のスライダーをニック・ゴンザレスがファウルチップを放った際に、隠していた右手に偶然それが当たってしまいました。
ウィル・スミスはイニングを守りきったものの、3回表に打席が回ってきたところでゲームから離脱。ダルトン・ラッシングが代打に送られました。
アクシデント後最初の画像検査(X線、CTスキャン、MRI)では異常がなかったため、ドジャースはウィル・スミスをすぐにILには入れないことを決断。
その後、9月9日のロッキーズ戦で1試合フル出場を果たしたものの、翌日に再び痛みを発症。ドジャースは9月13日からILに入れました。
その後も状況が改善しない中、この日、ヒビが見つかったという経緯です。
ヒビ(不全骨折)
ヘアライン・フラクチャーはいわゆる「ヒビ」です。髪の毛のような細さで骨に微細な亀裂が入っている状態で、日本語では毛細骨折、あるいは不全骨折とも呼ばれたりします。不全骨折の「不全」とは、骨が完全に折れて断ち切られていない状態を指します。
復帰はかなり不透明
レギュラー・シーズンは翌週の日曜日の現地9月28日に終了してしまいますので、どう考えても残りシーズンの欠場は決定(シーズン・エンディング)。
問題はポストシーズンに出場出来るかどうかです。
仮にドジャースが地区優勝し、NO.3スポットに収まったとすると、9月30日から始まるワイルドカード・シリーズからの参戦です。もっとも、NO.2以上ならワイルドカード・シリーズは免除でNLDSからで、現地10月4日からスタート。若干ですが、時間に余裕があります。
一応、ロバーツ監督は「レギュラーシーズン中の復帰は疑問だが、ポストシーズンには出場できる見込みがあるので、まだ希望を持っている」と発言。
不全骨折で言えば、カブスのカイル・タッカーがそうです。彼はゲームに出続けましたが、状態が悪い間は成績は下降を辿るのみでした。
Dバックスのコービン・キャロルは6月18日に左手首に死球を受け、なかなか痛みが引かない状況に再検査を実施したところ、6月23日に剥離骨折が判明。数ヶ月単位の離脱も予想されましたが、治りが良かったのか、7月4日までの離脱で済み、7月5日からはゲームに出続けております。
これはもう症状次第というしかありません。
PSのロスター
ポストシーズンのロスターはWCやNLDSなど各シリーズの前に決まりますが、もしウィル・スミスが出られそうなら、ドジャースは捕手を3名登録することになりそうです。
そうなると投手枠を削ることになるのですが、幸いなことに大谷選手が二刀流なので、投手用のロスターが一枠空いていますので、これを活用することが出来ます。ここでも二刀流の威力を発揮ですね。
D・ラッシングと併用していた理由
ドジャースは今季、トップ・プロスペクトのダルトン・ラッシングをメジャーに上げ、ウィル・スミスのバックアップとして起用。
ウィル・スミスが盤石なのにかなり思い切ったことをするなと思っておりました。
ウィル・スミスは4番、あるいは5番を打ち、シーズンを通してかなり安定した成績を残す打者と言えるでしょう。今季も110試合に出場し、.296/.404/.497、OPS.901をマーク、HR 17、二塁打 20、RBI 61。キャッチャーでということを考えるともはや驚異的な打撃成績です。
ただ、今季は8月にスランプに陥り、.159/.326/.304と低下。実はウィル・スミスはここ数年、シーズン後半に成績が低下する傾向があったのです。捕手で激しいポジションですから、そうなって当然です。
そこでドジャースは今年はそれを回避しようと、ウィル・スミスのコンディション維持のため、バテる前にダルトン・ラッシングを投入。週2回程度起用して行き、大谷選手の登板日でもマスクをかぶらせました。
今季もウィル・スミスは8月には落ちた訳なのですが、可能な限り、状態をコントロールしようとしたドジャースの管理ぶりはさすがとしか言いようがないです。ただ、さすがにファウルチップによる怪我まではコントロールの仕様がありません。
そのダルトン・ラッシングも9月5日のオリオールズ戦で自打球を当てて悶絶。結果、9試合ほど離脱することになりました。
ウィル・スミスもいない、バックアップのダルトン・ラッシングもいないという状況で台頭していたのがベン・ロードヴェット(Ben Rortvedt)です。
ベン・ロードヴェットで9回までNO-NOを2度!
ドジャースはベン・ロードヴェット(Ben Rortvedt)を今トレードデッドラインで獲得。3チーム・トレードでした。
このトレードではハンター・フェドゥッチア(Hunter Feduccia)を失ったことの方が話題なり、ベン・ロードヴェットはほぼ注目されてはおりませんでした。
捕手を出したら、捕手が必要になってくるというのはトレードのあるあるですが、ドジャースはベン・ロードヴェットをメジャーに上げた訳です。
これが大成功だったと言っていいでしょう。
ロードヴェットはもともとは2016年のツインズの2巡目指名で、メジャー・デビューもツインズで2021年に果たしています。
2022年に3月にツインズゲイリー・サンチェスとジオ・アーシェラを獲得したトレードで、IKF、ジョシュ・ドナルドソンとともにヤンキースへ移籍。2022年はメジャーの出場がなく、2023年に30試合に出場。その後、2024年の開幕前にレイズ、ヤンキース、マーリンズとの3チームトレードでレイズへ移籍。ジョン・バーティーがマイアミからヤンキースへ移籍したトレードです。
2024年は112試合に出場。この経験値が大いに活きたのです。
ロードヴェットはメジャー登録からわずか5日で、9月6日の山本投手のニア・ノーヒットノーラン、9月8日のニア・コンバインド・ノーヒッターでマスクを被り、3日の間に2度、それらに携わりました。
さらにロサンゼルスでの初フル出場となった9月6日以降、先発ローテーションは13試合でNL最高のERA1.73を記録。ロードヴェットがいかに投手陣を巧みにリードしているかの証でもあります。
よって、ドジャースはウィル・スミスの不在の間はベン・ロードヴェットをメインに、ダルトン・ラッシングをバックアップとして起用していく見込みです。
そのほかに、もしも3人目となった場合に備えて、チャッキー・ロビンソンなども起用しておりました。
ベン・ロードヴェットにもっと注目していいかもしれませんね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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