選手会投票の結果
ちょっと時間が経ってしまったのですが、現地2025年10月29日、2025シーズンのPlayers Choice Awards(プレーヤーズ・チョイス・アウォーズ)が発表されました。
11月半ばになるとROY(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)を筆頭に、MOY(マネージャー・オブ・ザ・イヤー)、サイ・ヤング賞、そしてMVPが発表されますが、これらはいずれもBBWAA(全米野球記者協会)に所属する記者の投票によって決定されるアウォード。
こちらは現役MLB選手会会員の投票によって決定し、選手同士が互いをどう評価しているのかが分かる賞であり、多数の票を得た選手はある意味、記者からの投票よりも栄誉に感じるかもしれません。
投票の適正さを担保するため、監査会社も入っています(2025年はKPMG)。
このアウォードは1992年から実施されています。
Awardの概要
2024年からPhilanthropist of the Year (フィランソロピスト:慈善家)が新設され、計8部門となります。。
- MLB Players Choice Player of the Year (1人)
- MVP中のMVP。しかも選手が選んだというところが価値のあるところ。
- MLB Players Choice Outstanding Player(AL/NL)
- BBWAAの投票のMVPに相当。選手が選んだ各リーグのMVP。
- MLB Players Choice Outstanding Pitcher (AL/NL)
- BBWAAのサイ・ヤング賞に相当。現場が選んだサイ・ヤング賞。
- MLB Players Choice Outstanding Rookie (AL/NL)
- BBWAAのROY(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)に相当。選手が選んだルーキーNO.1。
- MLB Players Choice Comeback Player (AL/NL)
- 怪我などから復帰し、素晴らしい成績を残した選手に贈られます。
- MARVIN MILLER MAN OF THE YEAR AWARD (1人)
- フィールド上の優れたパフォーマンスとフィールド外の地域社会への貢献が認められた選手に贈られる賞で、リーダーシップをもって他の選手に良い影響を与えた選手も対象です。マービン・ミラーは、選手会に尽力した人物。詳細は下記の記事をご参照ください。
- MLB Players Curt Flood(カート・フラッド) Award (1人)
- 1970 年代に選手の自由な移籍を阻んでいたリザーブ・クローズ(留保条項)と戦い、フリーエージェントへの道を大きく切り開いたカート・フラッドを記念して設けられた賞。「選手会と選手の権利向上のために無私の献身を長年にわたって示した元選手(存命、故人を問わない)」に贈られます。
- Philanthropist of the Year(1人)
- 文字通り、慈善活動を行い社会貢献した選手に贈与される賞。
では2025シーズンの受賞者をご紹介します。
MLB Players Choice Player of the Year
- カル・ロリー(Cal Raleigh/SEA) C
選手が選ぶMVP中のMVPは60HRをマークしたマリナーズのカル・ロリーに決定。ニック・ネーム”The Big Dumper”(直訳すると「大きな尻」)のカル・ロリーはシーズンHR60本、RBI 125、.247/.359/.589、OPS .948と最強の捕手として君臨。スイッチ・ヒッティングで左打席で38本塁打、右打席で22本塁打を放ち、そのスキルの高さも選手からの評価を得た結果となりました。初受賞です。
Finalist
ファイナリストはアーロン・ジャッジ(NYY)、大谷選手(LAD)、カル・ロリー(SEA)でした。
MLB Players Choice Outstanding Player
- 【AL】カル・ロリー(Cal Raleigh/SEA) C
- 【NL】カイル・シュワーバー(Kyle Schwarber / PHI) DH
AL カル・ロリー
カル・ロリーの詳細は上述のPlayer of the Yearに。こちらも初受賞となります。
Finalist
ファイナリストはカル・ロリーの他にアーロン・ジャッジ(NYY)、ジュニオール・カミネロ(TB)、ホセ・ラミレス(CLE)、ボビー・ウィット・Jr.(KC)が選ばれておりました。
NL カイル・シュワーバー
フィリーズのDH、カイル・シュワーバーは2025年、その驚異的なパワーを新たなレベルへと引き上げ、NLトップかつキャリアハイとなる56本のHRを放ちました。そのうち16本は430フィート以上、5本は450フィート以上。32歳のシュワーバーは、MLBトップとなるRBI 132をマーク。そのほかにも1、2番を打つことの多かったカイル・シュワーバーはRun 111、Hit 145、そして3年連続で100以上のBBを獲得し、チャンスメイク、得点双方でチームに大きく貢献しました
Finalist
NLのファイナリストはカイル・シュワーバーの他に大谷選手(LAD)、フアン・ソト(NYM)が選ばれておりました。
MLB Players Choice Outstanding Pitcher
- 【AL】タリク・スクーバル(Tarik Skubal/DET) LHP
- 【NL】ポール・スキーンズ(Paul Skenes/PIT) LHP
AL タリク・スクーバル
タリク・スクーバルは、2024年に次いで2年連続での受賞。2025年は2年連続で開幕投手に指名され、前年チャンプのドジャースと対戦。残念ながらこの試合に敗れ、2戦目にも敗れたため、2連敗のスタートとなったものの、その後は本来の力を発揮し始め、5月25日のガーディアンズ戦では2024年に成し遂げることができなかった完投(この試合は完封)を達成。しかもこのゲームは94球で「マダックス」の達成にも関わらず13奪三振を記録しました。オールスターではALの先発にも指名される栄誉に。
8月19日には2年連続で200奪三振を達成。2025シーズンは13勝6敗、ERA 2.21で終え、2年連続でERA タイトルを獲得、241奪三振はギャレット・クロシェに次ぐAL2位の記録に。
Finalist
ALのファイナリストはタリク・スクーバル(DET)、ギャレット・クロシェ(BOS)、ブライアン・ウー(SEA)でした。
NL ポール・スキーンズ
2025年、22歳でパイレーツ史上最年少で開幕投手に指名されたポール・スキーンズは夏にはオールスターにも2年連続で選ばれまたが、いかんせんチーム状態が悪く、0または1失点の登板にもかかわらず勝利を収められないこと多く、ERA 1.94で4勝7敗でした。ただ、7月全体では27イニングでSO 36奪、BB 3でERはわずか2に抑え、NLのPOM(月間最優秀投手)を受賞。
その後もチーム状態が悪いまま先発としての職務を全う。シーズン全体では32先発で187.2イニングを投げ、SO 216、10勝10敗でERAは1.97。
Finalist
NLのファイナリストはポール・スキーンズのほか、フレディー・ペラルタ(MIL)、クリストファー・サンチェス(PHI)が選ばれました。
MLB Players Choice Outstanding Rookie
- 【AL】ニック・カーツ(Nick Kurtz/ATH) 1B
- 【NL】ドレイク・ボールドウィン(Drake Baldwin/ATL) C
AL ニック・カーツ
ニック・カーツは2025年4月23日のデビュー戦でまず1安打を放つと、そこから1試合に1安打のペースでヒットを量産。初HRはメジャー17試合目の5月13日のドジャース戦。それからのニック・カーツは5月後半の半月で5HRをマーク。6月には7HR、7月はオールスター・ブレイク期間があったにも関わらず、HR 11本を量産。8月は疲れも出て4本と落ちましたが、9月には再び9本をマーク。結果、HR 36、RBI 86、BA .290をマーク。デビューが遅かったので規定打席には到達しなかったもののチームメイトのジェイコブ・ウィルソンを霞ませるほどの活躍を見せたのでした。
Finalist
ファイナリストはニック・カーツの他、ジェイコブ・ウィルソン(ATH)、ノア・キャメロン(KC)でした。
NL ドレイク・ボールドウィン
24歳の捕手のドレイク・ボールドウィンは2025年は124試合に出場。打席数は446で.274 /.341/.469、OPS .810、HR 19、RBI 80をマーク。素晴らしいオフェンス力を見せつけました。
Finalist
ファイナリストはドレイク・ボールドウィンの他、アイザック・コリンズ(MIL)、ケイド・ホートン(CHC)でした。
MLB Players Choice Comeback Player
- 【AL】ジェイコブ・デグロム(Jacob deGrom/TEX) RHP
- 【NL】ロナルド・アクーニャ・Jr.(Ronald Acuña Jr./ATL) OF
AL ジェイコブ・デグロム
サイ・ヤング賞2度受賞(2018/19)のジェイコブ・デグロムは2023年6月にトミー・ジョン手術を実施。2024年終盤の9月13日にメジャーのマウンドに復帰。この時はもはや来季に向けた本番環境でのリハビリの意味もありました。
2025年は復帰後初のフルシーズンとなり、30試合、172.2イニングを投げ、12勝8敗、ERA 2.97をマークしました。
Finalist
ファイナリストはジェイコブ・デグロムの他、ハビアー・バイエス(DET)、トレバー・ストーリー(BOS)。
NL ロナルド・アクーニャ・Jr.
2023年に40/70を達成し、NL MVPを受賞したロナルド・アクーニャ・Jr.は、現地2024年5月26日のパイレーツ戦で右膝のACLを断裂。
過去、現地2021年7月10日にウォールへの激突を避けて右膝ACLを断裂していたロナルド・アクーニャ・Jr.はこれで両膝のACLを断裂したことに。
慎重に対処したブレーブスはアクーニャを無理に開幕に合わさせることなく、2025年5月23日に復帰させました。復帰後は95試合に出場。.290/.417/.518、OPS .935、HR 21、RBI 71をマーク。2025年は足への負担を考え、盗塁は9にとどまりました。
Finalist
ファイナリストはロナルド・アクーニャ・Jr.のほか、クレイトン・カーショウ(LAD)、ブランドン・ウッドラフ(MIL)、クリスチャン・イェリッチ(MIL)。
Marvin Miller Man of the Year
- ブレント・スーター(Brent Suter/CIN) LHP
ブレント・スーターは、MLB選手会の選手代表として、リーダーシップを発揮し、安定した確かな発言力を発揮。ロベルト・クレメンテ賞に複数回ノミネートされ、2022年にはマービン・ミラー賞にもノミネートされました。スーターはアスリートとしての立場を活かし、気候変動の影響、プラスチック廃棄物の世界的な危機、その他の環境問題への関心を高めてきました。故郷シンシナティでレッズで投手として活躍する傍ら、地域社会にも積極的に関わり、地域の困窮している子どもたちを支援する「スリープ・イン・ヘブンリー・ピース」などの青少年団体と協力。これらが評価され受賞となりました。
Finalist
ブレント・スーターの他、クリス・バシット(TOR)、ピート・フェアバンクス(TB)がファイナリストでした。
MLB Players Curt Flood Award
- ドン・ベイラー(Don Baylor)
- スコット・サンダーソン(Scott Sanderson)
ドン・ベイラー氏は、オリオールズのOFとして活躍した際に、選手会の使命を理解。彼は最終的にクラブ代表およびアメリカンリーグ代表の地位に昇り、その立場から執行部長マービン・ミラーとドナルド・フェアに対し貴重な助言を提供。ベイラーは、オリオールズ、エンゼルス、ヤンキース、その他3球団で19シーズンにわたり、6度のストライキとロックアウトを経験しながらも、極めて重要な役割を果たしたことから受賞となりました。
スコット・サンダーソン氏は、1994年から95年にかけて行われた選手会の歴史的な232日間に及ぶストライキにおける指導力で同時代の者たちに記憶されています。最も多くの参加者を集めた会議で、彼が最初に立ち上がり、選手会の使命を明確にしました。「挙手をお願いします。我々の後継となる選手たちに、先人たちが我々に与えてくれたものより少ないものを残したいと思う者は?」当時の組合指導者たちは、この瞬間を画期的と位置づけています。MLBによる組合解体とサラリーキャップ導入の試みを阻止する選手会の取り組みに、新たなエネルギーと明確な方向性を注入した決定的瞬間だったと言われています。
Finalist
ファイナリストはそもそも上記の二人でした。
Philanthropist of the Year
- アーロン・ノラ(Aaron Nola/PHI) RHP
2024年シーズン中、アーロン・ノーラは三振1つにつき1,000ドルを退役軍人支援機関である「チーム・レッド・ホワイト・アンド・ブルー」に寄付し、197三振で総額19万7,000ドル。
また、全米各地で開催される「ストライク・アウト・ALS」ボウリング大会でALS研究支援を募っています。2025年にはワシントンD.C.のALS協会より年間ボランティア貢献賞を授与されています。
Finalist
ファイナリストはレンジャーズのカイル・ヒガシオカ、ロイヤルズのマイケル・ワカが選出。
なお、プレーヤーズ・トラストはさらに、ホワイトソックスOFのマイク・トークマン、
ジャイアンツのRHPであるライアン・ウォーカー、タイガースのユーティリティ選手のザック・マッキンストリーを2025年「最も価値ある慈善活動家」として表彰しています。
お読みいただき、ありがとうございました。

















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