3人のウィンドウ・オープン
今オフはNPBから4人の選手がMLBに挑戦します。村上宗隆選手(ヤクルト)、岡本和真選手(巨人)、今井達也投手、髙橋光成投手(ともに埼玉西武)。
村上は一足早くスタート
村上選手は一足早くポスティング手続きに入り、現地2025年11月7日に申請が受理され、ウィンドウ(交渉期間)はその翌日の現地2025年11月8日から45日間オープンとなっており、期限は現地2025年12月22日です。どの選手も45日間をフルに使ったとすれば村上選手が一番早く決まる予定です。村上選手のエージェントはESM(エクセル・スポーツ・マネージメント社)。
今井は11月19日から
西武の今井投手は現地2025年11月19日に正式にポスティングされ、すでに45日間のウィンドウが開いており、期限は現地2026年1月2日。
今井投手のエージェントはボラス・コーポレーションのスコット・ボラス氏。
岡本、高橋は21日から
現地2025年11月21日、巨人の岡本和真選手と西武の髙橋光成投手のポスティングが受理され、ウィンドウは同日午前8時(東部時間)から45日間で、現地2026年1月4日午後5時(東部時間)が期限です。
村上選手も含めて、もしも期限内に契約が成立しない場合はNPBの球団に戻ることになります。
岡本選手のエージェントは今井投手と同じボラス・コーポレーションのスコット・ボラス氏、高橋投手のエージェントはワッサーマン社です。
MLBは現地12月7日から10日までウィンターミーティングが開催され、これが一つの大きな動きになりそうです。
3名はいずれも同じ手続き
一般的なNPB選手のMLB挑戦への契約プロセス
まずは一般的な例としてNPBの選手がMLBに挑戦する際のプロセスを整理しておきたいと思います。
NPB選手のFA権の要件は2つ。
NPBの選手もMLBの選手のサービスタイム(MLS)と同じように1シーズンを1年と換算する計算があります。NPBの場合は年間145日の一軍登録を1年とし、それに満たない一軍定着前のシーズンが複数あれば合算して累計でカウントされます。そのNPB版のサービスタイムの計算で以下のシーズンを過ごした場合、フリーエージェント権利を有することとなります。FA権利は国内FA権と海外FA権に分かれており、国内が8シーズン、海外が9シーズンとなります。流出を防ぐためにやはり海外の方が長めに設定されております。
- 国内FA権:8シーズン
- 海外FA権:9シーズン
9シーズン未満の選手の場合は?
では9シーズン未満の選手はどうなるのか?というのが次の説明です。
フィルター1:ポスティング
海外FAの資格を得る前にMLBでのプレーを希望する選手は、「ポスティング・プロセス」という制度を利用しなければなりません。
日本の球団は11月1日から12月15日の間に選手をポスティングすることができ、それが受領・承認されればMLBのクラブはその選手と交渉することが出来ます。その期間は45日間。
選手との契約が決まったMLBのクラブは、日本の所属球団にリリース・フィーを支払うことになります
(リリース・フィー)
- $25M未満で合意した場合→20%
- $25,000,001〜$50Mで契約した場合
- 最初の$25Mに対して →20%
- 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
- $50,000,001以上の契約
- 最初の$25Mに対して →20%
- 次の$25Mを超える額に対して→17.5%
- $50Mを超える部分に対して→15%
- 契約にSupplemental Fee(余剰の料金)がある場合、サイニング・ボーナス(契約金)あるいは、Vesting Option(〜を達成すれば$〜)がある場合はそれぞれ15%。
- マイナー契約の場合は、契約金の25% + 40manロースターに登録された場合の追加料金が加算されます。
フィルター2:ISBPの考慮
MLBが外国人選手と契約する場合はフリーエージェントか、もしくは日本人選手の場合はそれにプラスして上述のポスティングシステムを通じて契約しなければなりません。
ISBPとは”International Signing Bonus Pool” (インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール)のことで、大雑把に説明すれば、海外選手と契約する場合の各クラブの契約金の総額のことです。かつて契約金を釣り上げることで根こそぎいい選手を持っていく場合があったので、公平を期するように各クラブの契約金に上限がかけられいる・・・というイメージです。
ただし、NPBの9年未満の選手でポスティングを利用してMLBに挑戦する場合は特例があり、以下の条件をクリアーしていれば、ISBPを考慮しなくて良いということになります。
- 年齢は25才以上
- 外国のリーグ(=NPB)で少なくとも6シーズン経過
- 年齢、シーズン数が満たない場合、ポスティング+インターナショナル・サイニング・ボーナス・プールということになります。
今井選手は現時点で27歳で、NPBには通算8シーズン在籍しておりましたが、NPB版のサービスタイム計算では8シーズン未満の計算になるので、ポスティングが必要になります。ISBPの考慮に関しては年齢及びリーグ経験でそれぞれ満たしているので、獲得する側はサラリー+リリース・フィーのみで良いことに。
また、岡本選手は現時点で29歳で、2025年終了後に国内FA権を取得。しかし、海外FA権は満たしていないので、ポスティングということに。ISBPの考慮は年齢及びリーグ経験とも満たしており、やはりサラリー+リリース・フィーのみで良いことに。
高橋投手は現時点で28歳で岡本選手と同じく2025年終了後に国内FA権を取得。しかし、海外FA権は満たしていないので、ポスティングということに。さらにISBPの考慮は年齢及びリーグ経験とも満たしており、やはりサラリー+リリース・フィーのみで良いことに。
今井に注目が集まる
山本フィーバーも後押し
ドジャースの山本由伸投手はNPBで2021年から2023年まで3年連続沢村賞を受賞。
その山本投手はメジャー2年目の2025年のポストシーズンでNLCS Gm2とWS Gm2で2試合連続完投勝利を達成。さらにワールドシリーズでは、Gm2の完投後にGm6でも7イニングに登板。そして決戦となったGm7では9回裏1アウトから延長11回まで連投にも関わらず、2.2イニングを投げ抜いて見事胴上げ投手に。シリーズMVPにも輝きました。そんな山本投手にMLB業界はかなり衝撃を受けており、日本人投手の価値をさらに上げたと言っても過言ではないでしょう。
今井投手ですが、2022年から3年連続で二桁勝利をマーク。ライオンズが苦戦する中、この数字はすごいというほかありません。しかも2025年のERAは1.92。そんな今井投手にESPNは今オフのFA選手のランキングで5位に位置づける高評価。正直、山本フィーバーの要素があることは事実でしょう。

また、今井本人は強いところで投げるというよりはせっかく強いリーグで投げるのだから、ヒリヒリするくらいの体験が欲しいと言っており、それがドジャースを倒したいところが切り取られて、拡がってしまっております。果たしてそれが本人の意向通りなのだろうか?とも思いますが、要はこの強いクラブに入るよりは強いクラブを相手に勝負してみたいという意向かと思いますので、そういう心意気は前向きで良いなと思います。
先発が欲しいのはどこもそうですから、かなりのクラブが名乗りを挙げてきそうです。
ボールの違いや怪我予防の対策もそれなりに準備してきているでしょう。西武時代はホーム球場が過酷で、春先は寒く、夏場は極端に暑い環境でしたから、どんな状況でも一定したパフォーマンスを維持してきた品質はメジャーでも役立ちそうに思います。
たまにイラついたようですが、援護のなさや球場環境の要素もあったかもしれません。
その今井投手にかなりの目利きのドジャースがどういう評価をしているのかは気になるところです。
岡本はショート・タームか
岡本選手はfangraphのスカウティング・レポートでも「2025年に94mphを超える球速に対して、怪我でシーズンの半分の出場時間にも関わらず、以前よりも劇的に成績を伸ばした」と、速いボールに対する評価が高いです。「過去3シーズンの94mph以上の球速に対するコンタクト率は合計で84%」とも。
つまり打撃はそれなりに評価はされています。問題は守備です。他の選手との兼ね合いもありますから、ショート・タームでだいたい3年で様子見されるように思います。
高橋はやや厳し目
髙橋光成投手に関しては、NPBが抱えすぎたという声が散見されます。つまり後2、3年早ければという声です。
2026年2月に29歳になる高橋投手は、2025シーズン、ライオンズで24試合に先発し、ERAは3.04。厳し目の評価は148.0イニングで三振数が88という点。奪三振率にすると14.3%でMLBのアベレージ22.5%とはかなり開きがあります。
高橋投手の2025シーズンの成績は小笠原投手がNPBの最後のシーズンにマークした24試合でERA 3.12、SO % 13.6とほぼ似ている点も厳し目な見方をされる要素ではあります。
どうなるでしょう。皆、いいディールとなるのを祈るばかりです。
お読みいただき、ありがとうございました。


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