今オフのブルージェイズはホット・ストーブ
現地2025年12月12日、またしてもブルージェイズが動きました。今度はブルペンを補強。
長年ジャイアンツのブルペンを支え、2025年のトレード・デッドラインでメッツに移籍し、今オフはメッツからFAとなっていたアンダースローのタイラー・ロジャース(Tyler Rogers)と3年契約で合意です。なお、後述しますが、こちらは双子の弟の方です。
現時点ではフィジカル・チェックの結果待ちでまもなくオフィシャルになる見込み。
なお、ブルージェイズは現時点で40manロスターがフル。タイラー・ロジャースのために空きを作る必要があり、その調整もあってオフィシャルになるのは数日かかるかもしれません。ピッチャーから削るのか、捕手から削るのか、あるいはOFから削るのか、ここは注目しています。内野手は5人のみの登録なので削れないと思います。
契約内容
ブルージェイズとタイラー・ロジャースの合意内容は以下の通り。
- 3年/$37M (2026-28) + 2029 オプション
- 2029: $11M べスティング・オプション
シーズンごとの内訳はまだわかっていないのですが、額面通りですとAAV(Average Annual Value)は$12.33M。4年目はべスティング・オプションとなっており、リリーバーのタイラー・ロジャースですから、イニング数で設定されると思われます。
高評価の契約
タイラー・ロジャースは1990年12月17日生まれで、2026年は35歳で開幕を迎えます。
35歳を超えるブルペン投手が3年契約でAAV $10M以上の契約を勝ち取るのは、マリアーノ・リベラ以来。マリアーノ・リベラは2007年12月にヤンキースと3年/$45M(2008-10)でサイン。今オフ、ブレーブスとサインしたロベルト・スアレスと同じ内容です。これはリベラが38歳から40歳までの期間の契約です。ちなみに、マリアーノ・リベラはファイナル・シーズンとなった2013年においても1年/$10M。43歳のシーズンにおいても単年で$10Mとなりました。
まだまだ99mphを悠々と叩き出すロベルト・スアレスに対して、タイラー・ロジャースはサブマリンで、急速はほぼ出ません。サブマリン特有の軌道と変化球でここまで評価が上がるのは凄いというしかありませんね。
なお、単年ではケンリー・ジャンセンが2025年の契約としてエンゼルスと1年/$10Mでサインしております。
タイラー・ロジャースとは
タイラー・ロジャースは2013年にジャイアンツから10巡目指名を受け、プロ入り。22歳の時です。そこから実に6年間をマイナーで過ごし、そのうち最後はトリプルAで3シーズンも過ごしたのでした。
タイラー・ロジャースはもはや野球を辞めて消防士の道に進もうと決意しようとしていたのです。ところが、 2019年シーズン終盤、ジャイアンツがようやくチャンスを与え、17.2イニングで失点3の好投を見せ、メジャー初年度を終えました。
サウスポーは兄、サブマリンは弟
タイラー・ロジャースがメジャーに上がった時、双子のメジャー・リーガー誕生でかなり話題となりました。双子の兄はテイラー・ロジャース(Taylor Rogers)で、弟より一足早く2016年にツインズでメジャー・デビュー。リリーバーとしてバリバリと稼働しておりました。
兄はサウスポーでテイラー、弟はサブマリンでタイラーです。
短縮シーズンとなった2020年が初のフルシーズンとなり、そこからタイラー・ロジャースはメジャーリーグで6シーズン以上、ILに入ることなく、投げてきました。2020年シーズン以降、2025年まで計403試合に登板。そこはこの弟の凄いところです。
肩肘の負担を軽減する軟投というピッチング・スタイルも功を奏したと思われます。
2020年のERAは4.50と打ち込まれはしましたが、2021年には80試合でERA 2.22でSVは13。2022年、2023年とともに68試合を投げ、ERAは3.57、3.04を記録。やや上がりましたが、それでも十分な数字です。
2024年は77試合でERA 2.82と品質が向上。
2025年はERA 1.98
そして極めつけは2025年。タイラー・ロジャースはジャイアンツで53試合でERA 1.80をマーク。ジャイアンツがコンテンダーで無くなったので、トレード・デッドラインではメッツに移籍。メッツでは28試合でERAは2.80。
2025年は計81試合でERAは1.98です。凄まじいですね。
弟のタイラーはかなりの遅咲きでしたが、今はMLB屈指のセットアッパーとなっております。
ボールが遅いのでWhiff %(空振り率)はリーグ下位に沈み、S0レートはキャリア通算で17.6%とリーグ平均の22.7%を下回りますが、彼のスタイルはこれで良いのです。
素晴らしいのは四球とHRに関する指標で、BBレートはキャリア通算で4.4%(リーグ平均は8.5%)、HRレートは1,6%(リーグ平均の3.2%)と非常に高品質です。
シンカーは82~83mph、スイーパー系は74mph。いかにタイミングを外す速度帯で投げているかということであり、1.0を超えればゴロを打たせるのが多いという指標のGB/FBはキャリアを通じて1.33で、ルーキー時代には2.27を記録。いい投手ですね。
アンダースローなのに左にも強い!
通常、サイドより下から投げる場合、左打者を苦手とします。しかし、タイラー・ロジャースの特徴として、彼は左打者を通算776打席(PA)で.235/.289/.336に抑えています。右打者は989打席(PA)で.246/.282/.350。むしろ左打者の方が抑えていると言っていいでしょう。
トロントの終盤
そんなタイラー・ロジャースを迎えることとなったブルージェイズはこのオフシーズンには9回のジェフ・ホフマンに代わるクローザーを得ようと試みていましたが、エドウィン・ディアス、ライセル・イグレシアス、ロベルト・スアレスとの交渉は実らず。
となれば、クローザーは一旦、ジェフ・ホフマンを据えて、タイラー・ロジャースはセットアッパーとして稼働し始めそうです。イーミ・ガルシアの復帰もあるので、セットアッパーが整えば、最終的にはクローザーとして投げる可能性もあります。
タイラー・ロジャースはこれまでキャリアを通じて420試合登板で70試合のゲームを締めていますので、クローザーの経験も豊富ではあります。
ブルージェイズは右腕のルイス・バーランド、左腕のブレンドン・リトル、メイソン・フルハーティーらがおり、ここでサブマリンのタイラー・ロジャースが加われば、かなりバラエティーに富んだゲーム終盤となります。
ブルージェイズ、2年連続で贅沢税超過
ブルージェイズは贅沢税を2024年は閾値内に収め、一旦はリセットさせていたのですが、2025シーズンは$241Mに対して$278Mで$37M超過。2026年はディラン・シーズとのディールも決めていますので、現時点で$290Mとなり、閾値$244Mを軽く超えており、2年連続超過が確定。
超過2年目の場合、$264Mから$284Mまでの支出には42%の税率が掛けられ、$284Mから$304Mまでは75%の税率が掛けられます。さらに$304Mを超えた場合は90%の税率となります。
ロジャースのAAV $12.3Mを加えるまでは$278Mでしたから、$42%の税率で済みましたが、現時点では75%の税率です。また基準値$244Mを$40M以上超えた場合($288M)、2027年のドラフトでのトップ指名権が10位下がります。
これはもうタイラー・ロジャースとの契約云々ではなく、もう超過での税率アップ及びドラフト指名件の10位後退はもともと避けられないものではありました。
ボー・ビシェットは流出へ
なお、この贅沢税の状況ですから、FAとなっているボー・ビシェットをこのまま流出させることも已む無しと見ていいのではないか?とも思われます。
お読みいただき、ありがとうございました。




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