新GMのゲーブ・キャプラーがブルペンを補強
現地2025年12月24日、マイアミ・マーリンズがレイズからFAとなっていたリリーバーとして定評のあるピート・フェアバンクス(Pete Fairbanks)と1年契約で合意に至りました。現時点ではフィジカルチェックの結果待ちで、さらにマーリンズは40manロスターがフルなため、誰かをDFAにしないといけません。そのロスター調整もあり、まだオフィシャルとはなっておりません。
マイアミは今季から新GMにゲーブ・キャプラー(Gabe Kapler)を採用。ゲーブ・キャプラーは2018年から2023年にかけてフィリーズとジャイアンツで監督を務めた人物。2021年にはジャイアンツで107勝をマークし、MOY(Manager of the Year)を受賞。現場の指揮から今回のようなバックエンドでの編成まで非常に幅広い見識を有している人です。
そんなゲーブ・キャプラーが今オフ、割と活発に動いております。
そして今回はブルペンを補強。強力!と言っていいほどのリリーバーのピート・フェアバンクスをゲットしました。現時点でもはやクローザー候補とも言っていいでしょう。
契約内容
マーリンズとピート・フェアバンクスの合意内容は以下の通りです。
- 1年/$13M保証(2026)
- サイニング・ボーナス: $1M
- 登板数に応じたパフォーマンス・ボーナス:MAX $1M
- トレード・アサインメント・ボーナス: $0.5M
P・フェアバンクスの前の契約
ピート・フェアバンクスは今オフは初FA。MLSもちょうど6.057と6年のFA資格に到達。ただ、この前の契約は以下のような内容でした。
- 3年/$12M保証 (2023-25) + 2026 クラブオプション
- 2026 : $7Mクラブオプション($1Mバイアウト)
- 登板数によるパフォーマンス・ボーナスあり
- 2026 : $7Mクラブオプション($1Mバイアウト)
これは2023年1月にレイズと調停を避けてサインした内容。2026年のオプションが拒否された場合のバイアウトの$1Mを含んだ総額$12Mですから、年俸は$11M/3で割り切れず、$3.666666M/年 x3年(2026年だけ端数合わせで3.666667M)です。
また登板数により2026年のクラブオプションの単価が上がる設定がされていましたが、レイズはオプションを拒否。バイアウトの$1Mを支払うことになりました。
レイズにとってかけがえのないリリーバーだったのですが、これはもうクラブの懐事情がそうさせた訳で、レイズにとっては辛いところです。オーナーが地元の不動産デベロッパーに代わりましたが、大規模ファンドのオーナーではありませんので、これまでの少資本路線は今のところは変わっておりません。
ピート・フェアバンクスとは
今回の契約の報を受けて、最初に思ったのは「フェアバンクスにとってちょっと勿体ないな」というものでした。マーリンズは2025年は79勝83敗で、まもなく勝率5割でNLイースト3位。ある程度はコンテンダーになり得たけれども、「もっとコンテンダーのクラブとマルチイヤー・ディールで決められたのでは?」というところでした。
ピート・フェアバンクスは1993年12月16日生まれの32歳。
2017年にキャリア2度目のTJ手術
もともとは2015年のレンジャーズの9巡目指名。ドラフト・イヤーにルーキー・リーグを経ずにクラスA-でプロデビューを飾ったフェアバンクスは先発を中心に57,1イニングでERA 3.14をマーク。2016年はクラスAに昇格し、やはり先発を中心に101.1イニングを投げ、ERA 4.88。
順調に昇格していったフェアバンクスは2017年はクラスA+で開幕を迎えましたが、このシーズンはERA 5.79と打ち込まれ、シーズン途中にUCLを断裂したことが判明。トミー・ジョン手術を受けました。彼はハイスクール時代にも一度トミー・ジョン手術を受けており、これでキャリア2度目の手術ということになり、2017年の残りシーズンと2018年の全シーズンを離脱するに至りました。
TJ手術後、ハードスロー投手に!
トミー・ジョン手術後はよく球速が上がると言いますが、ピート・フェアバンクスがまさにそう。
これまでロー・マイナーで7.0前後だったSO9は術後2019年のクラスAで10.9に。すぐにダブルAに昇格してここでは17.9という驚異的な数字をマーク。トリプルAでも15.9をマークし、トントン拍子で2019年6月9日にレンジャーズでメジャー・デビュー。デビューから約1ヶ月の成績はリリーフのみで21.0イニングを投げてERA 9.35。SO9は15.6とメジャーに上がってからも相変わらずのハードスローぶりを披露していましたが、いかんせんBB9が7.3とコントロールが定まりませんでした。おそらく力みもあったのでしょう。
そして2019年7月半ばにレンジャーズがニック・ソラックを獲得したトレードでレイズに移籍。レイズ移籍後は12.1イニングでERAは5.11。SO9は9.5に抑えられましたが、BB9は2.2に改善。
2020年からリリーフとして台頭
ようやく品質が上がってきたフェアバンクスは短縮シーズンの2020年に26.2イニングでERA 2.70をマーク。SO9は13.2とまた上がり、BB9は4.7。レイズはこの年、ワールドシリーズに進出しましたが、フェアバンクスはそれを押し上げた功労者の一人。ポストシーズンでは計12試合、15.0イニングを投げ、ERA3.60。ドジャースとのワールドシリーズでも3試合に登板しました。
2023年以降はレイズのクローザー
2021年以降のフェアバンクスは2025年までの5シーズンで計227試合、217.2イニングに登板し、12勝18敗、ERA 2.89をマーク。この間のSO9は11.0、BB9は3.3、HR9は0.7です。2022年まではゲーム終盤の厳しい場面のセットアッパーで投げていたので、それも含めてこの成績は素晴らしいの一言。
2023年以降はクローザーとして登板することが多く、3シーズンで計75セーブをマークしました。
レイズがなくなく2026年のオプションを拒否したというのがよくわかると思います。本当に財政面が良ければというところです。
特徴
フェアバンクスは90mph後半のファストボールと80mph半ばのスライダーのコンビネーションで勝負する投手で、リリーバーでショートイニングということもありますが4シームのアベレージは2022年に至っては99mphをマーク。2025年でも97.3mphをマークしています。あとはチェンジアップとカットボールもそれぞれ5%未満を投げます。
キャリアを通じたSOレートは30.0%を超え(MLB平均は22.7%)、BBレートは9.3%(MLB平均は8.5%)。平均以上の45.1%でゴロに仕留め、HR9は 0.81と、概ねフィールド内に打球を留めています。
懸念点は怪我
キャリア初期の2017年の2度目のTJ手術以降、シーズンをまるまる離脱したことがないピート・フェアバンクスですが、怪我が多いのも事実で、2021年から2024年にかけて7回もILに入っています。
2025年は非常にヘルシーで60.1イニングというのはキャリアハイです。彼はヘルシーでありさえすれば圧倒的なバックエンドリリーフ投手として活躍が期待されます。
マーリンズはブルペンを強化
ピート・フェアバンクスの加入により、マーリンズはブルペンを強化しました。
2025年のマーリンズはブルペンが悪く、ERAは4.27でMLB 23位、SOレートは14.1%でリーグ17位でした。
ロニー・エンリケスが右肘を手術
その中で最も活躍したのは右腕のロニー・エンリケス(Ronny Henriquez)。25歳のエンリケスは2025シーズン、69試合に登板し73.0イニングを投げ、ERA 2.22、SOレート 32.3%を記録し、シーズンを通して7セーブを記録。
2024年のオフシーズンにウェーバーでエンリケスを獲得したマーリンズにとって、これは最高の結果でした。しかし残念なことに、現地2025年12月23日に右肘を傷めていたことが判明。インターナル・ブレース手術を行うこととなり、2026年の全休が決まりました。これは痛いですね。
よってピート・フェアバンクスを獲得したのは大きかったのです。
良い面として、マーリンズは2025年、リリーフ投手7人が50イニング以上を投げ、経験を積みました。中でもタイラー・フィリップスの77.2イニングと最多でERAも2.78を記録。カルビン・フォーチャーとレイク・バチャーのERAはそれぞれ3.28と3.78。一方、アンソニー・ベンダー、ケイド・ギブソン、バレンテ・ベロゾはゴロ率は堅調だったものの、三振数は平均を下回っていました。フェアバンクスの獲得により、球速、三振、ゴロ数が増加し、ブルペン陣の強化が図られるのは明白であります。同時に、エンリケスの負傷をカバーし、若い投手陣の負担を軽減するということに。
そうなれば、マーリンズは良い循環も見えてきます。ゲーブ・キャプラーはすでに今オフ、やはりレイズからクリストファー・モレルを獲得済み。今ひとつ爆発してない感のあるモレルですが、そのポテンシャルはカブス時代も含めて魅力ではあります。
2026年はブレーブスも復調してくるでしょうから、NLイーストはやはりアツいですね。
お読みいただき、ありがとうございました。






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