ブルージェイズ、9回裏に同点ならず!
メジャー・リーグを見ていると本当に予測不可能なことが起こります。それはレーダーによる可視化装置を導入済みの今でもなお。
現地2025年10月31日、ブルージェイズの3勝2敗で迎えたワールドシリーズGm6は「なんたるエンディング!」と思えるほどの結末を迎えました。おそらくこれは球史に残る出来事の1つになるでしょう。
なお、ブルージェイズはホームゲームですが、ゲン担ぎなのかパウダーブルーのオルタネイトのジャージを着用。このオルタネイトはホームでもロードでもどちらでも着用できるカラーです。カージナルスやフィリーズなどもそうですが、かつてロードで使用していたカラーをオルタネイトとして採用し、ホームのお客さんにもきれいなパウダー・ブルーのジャージを見せることがたまにありますね。メジャーの場合、グレーはロードで着用しますが、グレーでなければホームで着用して良いという考えなのでしょう。
スターティング
まずはGm6のスターティング・メンバーです。
| # | Dodgers | Pos. | # | Blue Jays | Pos. |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Shohei Ohtani | DH | 1 | George Springer | DH |
| 2 | Will Smith | C | 2 | Nathan Lukes | LF |
| 3 | Freddie Freeman | 1B | 3 | Vladimir Guerrero Jr. | 1B |
| 4 | Mookie Betts | SS | 4 | Bo Bichette | 2B |
| 5 | Teoscar Hernández | RF | 5 | Daulton Varsho | CF |
| 6 | Max Muncy | 3B | 6 | Alejandro Kirk | C |
| 7 | Enrique Hernández | LF | 7 | Addison Barger | RF |
| 8 | Tommy Edman | CF | 8 | Ernie Clement | 3B |
| 9 | Miguel Rojas | 2B | 9 | Andrés Giménez | SS |
| Yoshinobu Yamamoto | P | Kevin Gausman | P |
LAD:ムーキーを4番に
ドジャースはメンバー自体に変化はありませんが、ここまでのワールドシリーズの5試合で23打数3安打、.130/.231/.130、OPS .361とブレーキとなってしまっていたムーキー・ベッツをあえて4番に据えました。
大谷選手の後は四球で回ってくるケースが多いので、当たっているウィル・スミスを入れることで大谷選手への敬遠防止策という意味もありますし、4番とは言え、大谷選手の後ろよりは少しは気を楽にして打てる配慮もあってのことかと。それにムーキーが打てないのはむしろおかしいくらいのことですから。
TOR:ジョージ・スプリンガーが復帰
ブルージェイズですが、なんとジョージ・スプリンガーがリードオフで復帰しました。筆者は腹斜筋を傷めたと思っていたのですが(詳細は「右側を痛めた」とだけしか公表されず)、もう少し下の腰なのかもしれません。腹斜筋を損傷したらスイングどころではありませんから。この日も結構、強めにスイングしてましたね。顔をしかめるシーンが多かったので痛みを堪えての志願の出場かと。チームを支える選手がこういう強い意志を表示するチームは強いんですよね。
両先発、立ち上がりは上々
ブルージェイズ先発のケビン・ゴーズマンは今ポストシーズン6度目の登板(リリーフもあり)で、ワールドシリーズはGm2に次いで2度目の先発。
一方、ドジャース先発の山本由伸投手は今ポストシーズン5度目の先発でワールドシリーズはGm2に次いで2度目。つまりはGm2のリマッチということに。
なお、山本由伸投手はGm2でCG(Complete Game:完投)を達成。しかもこれは今ポストシーズン2度目。この山本投手の完投がMLBインダストリー内を大いにざわつかせております。あのマックス・シャーザーも日本の完投文化を絶賛するほど。長いイニングを投げるにはセーブする投球も必要でそれが投手の怪我防止にもつながるという考えです。
この両先発は立ち上がりは上々。ケビン・ゴーズマンは1回表を1、2、3番を三者連続三振です。4シームもゾーンの低めに決めてくるため、打者は低めを捨てに行こうとすると落ちずにそのままストライクを奪われてしまうという非常に厄介な投球です。ゾーン外ですからボールには違いないのですが、審判もストライク判定することが多いです。2026年にABSが始まるとこの投法がどうなるのか気になるところではありますが、現時点では最高のスキルと言っていいでしょう。
一方の山本投手は1回にマックス・マンシーのエラーで出塁を許しましたが、ゲレロ・Jr.からダブルプレーを奪い、無得点に。
ムーキー・ベッツがタイムリー
先制点はドジャースで3回表、1アウトから8番のトミー・エドマンがインハイの4シームをRF線に弾き返す2ベースを放ち、チャンスメイク。9番のミゲル・ロハスは三振に倒れ、2アウト2塁。
ここでバッターは大谷選手で、ブルージェイズはどう出るか?というところでしたが、大谷選手を申告敬遠しました。これはHRのリスクを天秤にかけたというところでしょう。
ドジャースにとっては2アウトとは言え、当たっているウィル・スミスですので、大いに期待するところ。そしてそのウィル・スミスは待ってましたとばかりに2球目のスプリッターをしっかりと捉え、これがLFポール際のフェンス直撃の2ベースとなり、エドマンが生還してまずは1点を先制。ブルージェイズとすればスプリッターを打たれれば仕方ないというところでしょうか?
2アウト2、3塁でフレディー・フリーマンというブルージェイズにとってはまだ怖い場面が続きますが、ここは無難にくさいところに投じて甘いボールを避けたという四球でした。
そして当たっていないムーキー・ベッツの打席に。2回表の第1打席は3Bゴロでした。2アウト満塁で、「ここで打たなければムーキー・ベッツというブランドが・・・」と考えたかどうかはわかりませんが、見ていて打ちそうな気配がしたと感じた人も多かったのでは。2ストライクを奪われた後の5球目、インハイに来た4シームをムーキー・ベッツらしいスイングで三遊間を破り、大谷選手、ウィル・スミスが生還してドジャースが2点を追加。
ドジャースにとってはゲーム序盤で3点を奪うという最高の展開に持っていけたのでした。
ジョージ・スプリンガーがタイムリー
3点を先制してもらった直後の山本投手の3回裏、先頭のアディソン・バージャーを2ストライクまで追い込んでいたのですが、5球目のアウトハイの4シームを逆方向へ痛烈に弾き返され、これが2ベースとなってノーアウトでランナー2塁。
つづく、アーニー・クレメント、アンドレ・ヒメネスを打ち取り2アウト3塁でジョージ・スプリンガーを迎えます。山本投手は慎重な投球を見せますが、3-0カウントに。そしてストライクを奪いに行った4球目のアウトハイのカット・ボールをきれいにCFに弾き返され、バージャーがホームイン。3-1と1点を返されます。それにしてもジョージ・スプリンガーはスイングの度に顔の表情が曇り、すぐに平静を装っていましたが、ここで1本を出すとはさすがとしか言い様がありません。
山本投手はこの後、ネイサン・ルークスを打ち取って1失点のみで切り抜けております。
山本、6回1失点で見事なゲームメイク
この後は両先発が素晴らしい投球を披露。
山本投手は6回裏、2アウトからゲレロ・Jr.に2ベース、ボー・ビシェットに四球を与え、2アウト1、2塁のピンチを迎えましたが、ドールトン・バーショウから空振り三振を奪い、無失点。この日はドールトン・バーショウを4回裏にもダブルプレーに打ち取るなど、彼を完全に封じました。
山本投手は6イニングを投げ、96球、被安打5、失点1、ER 1、BB1、SO 6という内容。この日はスプリッターがとにかく多かったので完投は無理かと思っていたのですが、十分過ぎる貢献度dした。
ケビン・ゴーズマンは6回を投げ、被安打3、失点3、ER 3、BB 2、SO 8。3イニング目の下位から上位へのターンで捕まったのみでした。良い投球だったと思います。
7回は動かず
ブルージェイズは7回表からルイス・バーランドを投入。三者凡退に抑えました。ドジャースは7回裏にジャスティン・ロブレスキーを起用。カーク、バージャーを抑えましたが、アーニー・クレメントに2ベースを打たれ、ピンチを招いたものの、アンドレ・ヒメネスを三振に打ち取り、無失点。7回にゲームは動きませんでした。
なお、8回表、ブルージェイズは大谷選手の打席でメイソン・フラハーティーを起用してきましたが、ここは大谷選手が2ベースを放ってしっかりと対応。しかし無得点でした。
佐々木が8回から登板
8回裏、ドジャースは佐々木朗希投手を起用。佐々木投手は先頭のジョージ・スプリンガーにうまくRF前に運ばれて出塁を許し、さらに1アウトからゲレロ・Jr.に四球を与え、同点のランナーを出すピンチを迎えます。しかし、ボー・ビシェットをSSポップフライに、さらにドールトン・バーショウを2Bゴロに打ち取り、このピンチを凌ぎました。
9回裏、ウォールにボールが挟まる
ドジャースは9回表、クリス・バシットに三者凡退に抑え込まれ、3-1のまま9回裏のブルージェイズの攻撃に。
マウンドは佐々木朗希投手。佐々木投手は先頭のアレハンドロ・カークを2球で2ストライクと追い込んでいたのですが、3球目のスプリッターが抜けてしまい、アレハンドロ・カークの手首に当たり、死球で出塁を許します。カークは大事をとって退き、代走にマイルズ・ストローが送られました。
ノー・アウト1塁でバッターは初回に2ベースを放ったアディソン・バージャー。佐々木投手はバージャーを追い込み、2-2カウント後の5球目、98.9mphの4シームがアウトハイに投じられると、これをバージャーが左中間に打った瞬間に長打とわかる快心の当たりを放ち、ブルージェイズが1点を返したかに思われました。
運も味方か?
CFは途中交代のジャスティン・ディーン。あわやHRか??というような当たりでしたが、打球がそれほど上がらなかったので2ベースは間違いないところでした。
ところが打球はフェンスとアンツーカーの間にスッポリと收まり出てきません。ジャスティン・ディーンがそれを懸命にアピールし、LFのキケ・ヘルナンデスもアピール。一応、ボールを取り出し、プレーを継続しますが、これは塁審もグランドルール・ダブルを宣告。リプレーとなりましたが、判定は覆らず。これでホームインしていたマイルズ・ストローも3塁へ返され、ノーアウト2、3塁で試合再開となりました。こんなことがこんな大事な場面で起きる?というこの不思議。
ドジャースに運があるのか?佐々木投手に運があるのか?
いずれにせよ、ドジャースは事なきを得たのです。ちょっと信じられませんでしたね。
タイラー・グラスノーが登板
この後、ドジャースはGm7の先発候補であったタイラー・グラスノーを投入。ワールドシリーズ終盤ならではのスペシャル・リレーです。
そのグラスノーはノーアウト2、3塁でアーニー・クレメントを迎えますが、好打者のクレメントを初球のインハイのシンカーで窮屈なスイングをさせ、1Bフライでまずは1アウト。このアウトは大きかったですね。ドジャースとしては同点も視野に入れていたと思うのですが、勝利も見えてくる1アウトでした。
つづくバッターはアンドレ・ヒメネス。この日はバーショウと同様、肝心なところで抑えられ続けてきました。
2球目、タイラー・グラスノーのシンカーを捉えたヒメネスの当たりは、LF前のシングルになるかと思われました。これが落ちれば2塁ランナーも還ると同点です。しかし、この難しい当たりにLFに入っていたユーティリティーのキケ・ヘルナンデスが割と余裕を持ってキャッチ。そして2塁ランナーが飛び出しているのを見たキケ・ヘルナンデスはランニング・スローで2塁へ送球。難しいバウンドになりましたが、これをミゲル・ロハスがしっかりとキャッチし、飛び出してバージャーを2塁でフォースアウト。
なんとこのピンチをドジャースはダブルプレーで切り抜けたのです。
これでゲームは3−1でドジャースが勝利。アディソン・バージャーの当たりが普通にウォールに当たり跳ね返っていたら、2-3と1点差に追いついていたブルージェイズ。しかもノーアウト2塁でチャンスを続いていました。
ドジャースにとっては願ってもない幸運。ブルージェイズにとってはまさにハードラックとなった9回裏の攻防。果たしてGm7に何か影響するでしょうか?全くわかりませんね。
Gm7はブルージェイズがマックス・シャーザー。ドジャースは大谷選手が投げることは間違いないですが、果たして頭から行くのか?この点も注目ですね。
お読みいただき、ありがとうございました。


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