ナ・リーグHRキングはフィリーズと再契約
FA市場でこの選手が決まらないと他の選手のディールに影響が出てしまうという選手がいますが、今オフの場合はフィリーズからFAとなっていたカイル・シュワーバーがまさにその人。DH、、ポイント・ゲッター、あるいはロングヒッターでチームの打撃の中心に据えたい選手です。
現地2025年12月9日、そのカイル・シュワーバーのディールが決定。フィラデルフィア・フィリーズと再契約となりました。
存在感の大きな選手のディール決定=NPB出身の選手にも動き
存在感の大きな選手のディールが決まりましたので、これでNPBから参戦している岡本和真選手、村上宗隆選手にも動きが出てきそうです。また、金額の面で行けばその費用を投手に振り分けることもありますので、今井達也投手のディールの活性化も期待できそうです。
契約内容
フィリーズとカイル・シュワーバーのディールですが、下記の合意内容となっています。
- 5年/$150M保証 (2026-30)
- AAV(Average Annual Value): $30M
現時点ではその内訳は出ておりませんが、5年/$150M保証 は間違いないところです。
カイル・シュワーバーの誕生日は1993年3月5日。2026年の開幕時は33歳。今回の契約は38歳までの契約ということになり、カイル・シュワーバーのキャリアの終盤までということになりそうです。
DHオンリーが見込まれる中、最大級の評価
上述のようにカイル・シュワーバーは2026年は33歳で開幕を迎えますが、この年齢でこの規模の契約はかなりレアなケースです。大谷選手は33歳になった時点も額面で$70Mのサラリーをもらいますが、それは29歳でFAになった時に結んだ契約であり、しかも投手との兼任も入れた額。
カイル・シュワーバーの今回の契約と近いところで行けば、J.D.マルチネスの契約が挙げられるでしょう。2017年オフにレッドソックスと5年/$110Mでサイン。ただ、これもJ.D.マルチネスが2018年で30歳になるというタイミングの契約であり、今のカイル・シュワーバーの年齢より若いとこのサインであり、さらにJ.D.マルチネスはOFの守備に就くこともあり、2018年には計57試合を守りました。
つまりカイル・シュワーバーの33歳から5年という期間、加えてDHオンリーの役割でのこのディールはまさに希少なケースと言えますし、最大級に評価された契約であると言えるでしょう。
それもそのはず!直近4年で計187HR
カイル・シュワーバーは2015年にメジャー・デビュー。昔からそのパワーたるやものすごいものを持っておりました。
2016年にカブスがワールドシリーズを制した時は、シーズン途中で怪我をポストシーズンでようやく復活という状態で、彼がいることが脅威でしかありませんでした。
その後、カブスはワールドシリーズを制したメンバーがこぞって2021年前後にFA資格に到達するという2021年問題を抱え、チームは徐々にリビルドの方向へ。そんな中、2020年にコロナ・パンデミックが発生。無観客の開催によりゲート収入が途絶えたカブスはさらにリビルドに追い打ちがかかり、2020年オフ、カイル・シュワーバーまでもノンテンダーとなったのでした。
カイル・シュワーバーはカブスがワールドシリーズを制した翌年の2017年からカブス・ファイナルイヤーの2020年までの4シーズンでHR 105、RBI 236をマーク。2020年は60試合の短縮シーズンでしたが、それも入れて4シーズン平均でHRは26.3本。この間、三振は512で打率は.229。パワーの影で脆さも併せ持った打撃でもありました。
2021年はナショナルズとレッドソックスに在籍し、年間でHR 32。ミスター・ジューンと呼ばれたのはこの頃。
ただ、この年は足(ハムストリングス)を故障して7月頭から8月半ばまで離脱しておりました。ここまでがキャリア前半というか、28歳までのカイル・シュワーバー。
2022年以降がすごすぎる
2022年、フィリーズと4年/$79M (2022-25)でサインしたカイル・シュワーバーはここからが凄くなりました。
つまり、打撃が進化を続けています。これまで通り、三振も多く、打率もそれほど高くないカイル・シュワーバーですが、四球を多く取ることで打率も徐々に改善。
そしてパワー面は2022年から2025年までの4シーズンで、HR数は187を計上。
2022年が46HR、2023年が47HR、2024年は38HR、そして2025年は56HR。1シーズン当たり46.8本というとんでもない数字を出しています。
プラトゥーンの問題も解消
プラトゥーンの問題も解消しております。
2021年は右投手、左投手で大きな差がありました。打率は右投手が.264、左投手が.268と左投手の方がむしろ良かったくらいなのですが、HR数が右投手に対しては28本(PA332)、左投手(PA149)がたった4本でした。もちろん、打席数の差もありますが、それにしても半分の打席数なら、HRもvs右投手の半分ほど来ないとおかしいですね。
これが2024年には打率は右投手が.218、左投手が.300とやはり打率の上では左投手からよく打ってはいるのですが、HR数は右投手が26(PA 444)、左投手からは12本(PA 248)。徐々に左投手からのHRも増えて来ました。
そして2025年。打率は右投手が.232、左投手が.252とやはり打率の上では左投手との打率の方が良いのですが、その差が詰まってきました。そしてHR数は右投手が33(PA 448)、左投手からは23本(PA 276)。打席数から考えると左投手からの方がよくHRも出ているということになり、もはや単打狙いで左投手を当ててもあまり意味はないという形に持ってきています。
スイングの軌道
ポストシーズンで「カイル・シュワーバーのスイングは上からだから長打が出るのだ」という日本の解説者に対して、「いやメジャー・リーガーは皆下からの軌道だ」というメジャー経験者とのちょっとした論戦がありましたが、筆者も日本の解説者と同じでカイル・シュワーバーの打撃は正面から見る限り、上からのように見えました。バットのヘッドが立っているようなスイングに見えるのです。横から見れば下から回っていることでしょう。カイル・シュワーバーはとりわけグルンとヘッドを利かすスイングをしますから。
実際は下から振り上げるような軌道になるから、上から叩くくらいの感覚でちょうど良い軌道になるということかと思うのです。素人意見ではありますが。
ただ、カイル・シュワーバーは少なくとも大谷選手のようにゴルフのドライバーを打つような軌道ではないと思うのです。それぞれ上半身と下半身の筋力などもあるでしょうからそこは個性ですね。
スイングも変わったのか、とにかくカイル・シュワーバーは進化しております。
競合
カイル・シュワーバーを巡ってはメッツ、パイレーツ、レッズ、レッドソックス、オリオールズ、ジャイアンツが狙っているという報道がありました。パイレーツは4年$120Mを提示したとも言われていますが、条件的にもフィリーズが上回りました。
カイル・シュワーバーはクラブハウスでもとても人気者ですから、これは現場の方からなんとしてでもというアツい思いがあったのかと想像します。
フィリーズ、贅沢税をまた超過
2026年の贅沢税の閾値は$244Mですが、フィリーズはカイル・シュワーバーの$30M/年を入れると現時点ですれに$288M超え。フィリーズは2022年から超過していますから、これで4年連続超過となります。
なお、カイル・シュワーバーは今回、QOを提示され、それを拒否していましたが、再契約ということなので、フィリーズにQOに関するペナルティーはありません。贅沢税がどれだけ超えるのかが焦点になります。
JT・リアルミュートはどうするか?
フィリーズのもう一つの課題は正捕手。JT・リアルミュートもFAです。果たして彼も呼び戻すのか、それともラファエル・マーシャンを正捕手に吸える気か、ここは見ものですね。
お読みいただき、ありがとうございました。








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